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外伝 良い大人達がサンタコス姉妹にガチで目の色変えている件

それは、いつの事だったか。

ある寒い冬の事だったと記憶している。

「ううー、寒い寒い」

「あら、アイン? あなたそんな手袋とマフラー持っていたのかしら。何だか趣味じゃないような気がするんだけれど」

「何だろうね、この赤白のヤツ、何だか祭りの日になるとこうして着けたい気分になるんだよね。……ん、あれ? そう言えばこれってどこって買ったんだっ  け……?」

「にしてもほんとに寒いわね……。ねえアイン、私スープ飲みたいわ」

「はいはい。ナビリア、あなたが良いならそれで構わないけど、この極寒の中でドレスはやっぱり頭おかしいと思うんだ」

「ふっふ、保護欲をそそられるでしょう。女性は上着をかけられてナンボよ!

そこから愛が生まれていくんだから!!」

二人組の少年と少女は祭りの喧騒でうるさい街中を進んでいく。

その時だった。

溢れるネオンのような輝きの中、手を繋ぐ二人の少女がこちらにやってくる。

「……?」

何だか言い表せない引っかかりを覚えた少年は、なぜかサンタクロースのコスプレをした少女達から視線を外せなくなっていた。

「コス、プレ……? なのかな?」

「何言ってるのよアイン。コスプレじゃなかったら何だって言うの」

不思議と口から出てきた疑問に、少年の隣の少女が呆れたようにツッコミを入れてくる。

だが少年には、見知った少女の声も騒がしい祭りの喧騒も全て聞こえていなかった。

ただ鼓膜を刺激するのは、少女の声。

響く歌声。

美しく透き通り、それでいて儚い淡い歌声。

姉妹らしい二人の少女、その妹らしき少女の方が歌を歌っていた。クラシックの歌詞なのか、聞き慣れない歌が聞こえる。

と、その時だった。

「へぶっ!?」

「あっ、ちょっとレベッカ!? 大丈夫なのです!?」

妹の方が躓いて転んでしまった。

手袋とマフラーをつけた、親切で面倒見の良い少年は反射的にそちらに駆け寄る。

手を伸ばし、姉妹を二人とも立たせてやる。

笑って、これだけ問いかけた。

 

「大丈夫?」

「ええ、ありがとうございます。もう大丈夫なのです!!」

「ありがとう、お兄ちゃん!!」

 

それだけだった。

ほんの些細なやり取りを経て、彼らはすぐに分かたれていく。

「どうかした、アイン?」

スープの屋台に早く行きたいのか、黒髪ロングの少女が催促するように問いかけてくる。

「いいや、何でも」

言い様のない何かがあったが、それも少年の心からすぐに消えていく。

ただ、これだけは分かった。

背後にピアノの音まで響く中、少年は隣の少女にこう同意を求めた。

 

「最高の歌声だったよね、さっきのサンタクロースの女の子」

「あら、誰が弾いているか知らないけど、このピアノの音も素敵だと思うわよ」

 

そんな邂逅があった。

甘く優しい、幻のような瞬間だった。

 

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