チャムとアンドレイアは、クラリス・レイヤーへタイナ・ミノウとの話し合いの内容を報告した。一時武装した兵に囲まれて身の危険を感じたが、無事レイドサイクロンと太極天は連携に向けて動き出したと。
「チャム、アンドレイア。ありがとう。これからレイドサイクロンは、太極天の考えを知り、絆を深めていく必要があります。まずはリーダー同士で会談をすることからかしらね」
 クラリスは意気込んだ。

 しかし、あくまでも会談の主導権は太極天にある。クラリス一行はタイナの寄越した使者に導かれ、太極天の砦に迎え入れられた。サイドランド産の湯豆腐と焼き魚が振る舞われ、腹を満たしていく。
「クラリス殿、サイドランドの食事はいかがでしょうか」
「とても美味しいです。久しぶりに、食べました」
 クラリスは、サイドランド出身で、彼女の母親のような存在だったリングリット・ラインカーネーションの顔を思い出していた。
「レイドサイクロンはウラノスの聖地、贖罪の地を取り戻すために活動しており、そのための協力者を探しています。私たちには復元者も所属しています。太極天は人間を中心とするグループですが、復元者に対する拒絶感などはないのでしょうか?」
 クラリスの問いは単刀直入だ。タイナは袴の袖に手を突っ込み、熟考しながら言う。
「ええ。組織の考えを明らかにするためには、敵を語らせれば良いでしょう。
 太極天は、サイドランドの旧態依然とした体制を敵視しています。サイドランドでは、老人たちが西に降臨した神へ国を捧げようと言い出しています。不思議なものですよね。老人の声が国の行く末を決めてしまうのです」
 タイナ・ミノウは隣のクリフへから盃を受け取り、酒を注いだ。
「私たちはこの現状を打破したいと考えています。
 サイドランドは古来より、内側から変化できない国です。ヘイアンに対するカマクラ、バクフに対するクロフネというように。外部の勢力が変化を促してきました。
 今後は私達がサイドランドのクロフネとなり、変革を促していきたいと考えています。そのためにはルクシオンで力を持つ必要があります」
 タイナ・ミノウはクラリスへ盃を向けた。
「太極天は、ルクシオンの部族が自分の故郷を取り返したいという気持ちを尊重いたします。復元者や人間といった枠組みは関係ありません。
 あなたたちのような若いチームがルクシオンで力を持ち、同じ世代である我々の革命に協力してくだされば、これに勝る幸せはありません」
「ありがとうございます。レイドサイクロンも、お力になれればと思います」
 クラリスは目尻を下げた。そして盃に口をつける。
〈お酒、得意にならなきゃなあ〉
 彼女は笑顔を浮かべながら、火照る頬を隠した。

 レイドサイクロンと太極天がお互いの目的をすり合わせた後、タイナはクリフに軍略囲碁を用意させた。クラリスは酒の香りに頭が少しぼうっとしていたが、タイナはますます饒舌になっていた。この男、細身だが相当の酒豪である。
「さて、早速ではありますが、次の作戦の打ち合わせをいたしましょう。
 対象となるのはルクシオンのオイディプスという部族です。この部族は純人間の民族なのですが、昨今の復元者排斥の世論に乗じて、周辺の復元者率の高い部族を排除しようと企んでいるようです。
 太極天はルクシオンの様々な部族が共存することを望みます。故にオイディプスの凶行を野放しには出来ません。クラリス殿、協力してくださりますね」
 柔和な雰囲気が、タイナ・ミノウの申し出を断りづらくする。
「それは……」
 クラリスの頭は急激に冴え渡ってきた。酒の勢いで了承をしてはならない要件のように思えた。しかし彼女はタイナの提案を拒否する言葉が出てこなかった。場の雰囲気に抗うことが、できない。
「この件は、持ち帰り検討させていただきましょう」
 そう言ったのはアンドレイアだ。
「そうですか。ルクシオンのネプチューン、ジュピターにも声をかけています。
 ご一考を」
 タイナは口角を上げた表情を崩さず、言った。

 砦を出たレイドサイクロンの3人は、太極天との会談を振り返っていた。
「姫。彼らは危険です。酒の場で重要な決断を迫るなど、通常の感覚ではない」
 アンドレイアは珍しく憤慨していた。
「私も驚いて、うまく対応ができなくてごめんなさい。もしかしたらサイドランドの風習だったかもしれないわ。でも、アンドレイアのお陰で、無責任な約束をせずにすんだわね。ありがとう」
 クラリスはアンドレイア、チャムを抱きしめて感謝を伝えた。

 その後、オイディプスに対してネプチューン、ジュピターの連合軍が攻撃を仕掛けたという情報が流れた。クラリスは太極天と再度話し合う必要性を強く感じた。

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