レイドサイクロンは『復元者に友好的な人間』のグループを探した。
 茶色の髪に黒い瞳を持つ、レイドサイクロンのメンバーのひとりである女性チャム・ハン・イーリーは、人間にしか見えない容姿を活かして、ルクシオンで活動する多くのグループを視察していた。

 だが、彼女の目に入ってきたのは、人間からの復元者への深い憎悪だった。
 もちろんチャムも、自分の見た人間像だけが人間の本性ではないとわかっている。それでも復元者の頭皮を引き剥がし、それを振りかざして自分の功績をアピールする人間の姿を見てしまうと、人間全員が復元者に悪意を持っているように感じてしまう。

「14年前から時間が止まっとるアルナぁ」
 チャムが呆れたのは、14年間リーダーの変わっていない組織に対してだ。
 彼らは14年前、復元者が人間の敵となった衝撃そのままに、復元者の脅威に対する危機感を煽り、復元者を迫害するルールを作って、それを部下に守らせていた。ルールを破るものに対しては罰も与えた。こうすることで彼らは、自分たちが組織を動かしていることを部下に認識させていた。
 この組織においては、復元者を迫害することが高評を得、上司に好かれるようになる。それによって迫害はエスカレートし、いつしか外部の人間から見るとひどく残虐に見える行為まで、メンバーが進んでするようになってしまった。
「復元者が『敵』になってから、彼らは復元者を見ちゃおらんアル。彼らにとっては、上司の顔色だけが判断の基準になっていて、復元者への暴行は感情を揺り動かすものじゃなくなっているのアルナ」
 チャムはこうした組織に出会ってしまった時は、ひっそりと身を引くことが大事だと考えていた。一度構築された組織の風土は上層部でなければ変えられない。だから一生添い遂げようと思える組織以外のために、頑張るのはやめよう。チャムはこの組織は腐っていると内心吐き捨て、その場を後にした。

 チャムは幾つかの人間のグループを渡り歩き、復元者に好意的な組織を探す。復元者に対する見方が固定化していない、できるだけ若い組織がいいだろう。
 チャムが目をつけたのは、太極天という組織だった。
「サイドランドのオンミョウジをルーツとする、若い人間ふたりが率いるチーム。レイドサイクロンにもつながるところがあるアル」
 レイドサイクロンはもともと『天候を律するもの』の意味を持つ。彼らはルクシオンに満ちているエーテルに干渉し、周囲の元素に働きかけることで天候を操ることができた。チャムは早速太極天のリーダーであるタイナ・ミノウに連絡を取った。

 太極天のリーダーであるタイナは、チャムの申し出に快く応じてくれた。太極天はレバノン東部の丘陵地に砦を築き、そこに宿泊していた。砦にはドレスコードがあるらしく、チャムは男性物のスーツを着て、アンドレイアと共に太極天の砦へ赴くこととなった。
 砦の中では、六壬式盤や渾天儀があたりに配置されたり、ところどころに霊符が貼られたりしており、おどろおどろしい雰囲気を醸し出している。
 砦の奥にはひな壇が設けられており、その一番頂上に敷かれた金色の座布団の上で、タイナ・ミノウは膝を立てて座っていた。
「ようこそ。まさか我々と似たようなグループがルクシオンにも存在しているとは、驚きました」
「こちらこそ。ルクシオンでは占いに動物の骨を使ったりするのですが、ここではいろんな道具を使うようですね」
 言ったのはアンドレイアだ。タイナはクスリと笑う。
「ご興味があれば占いましょうか? そうですね、例えば我々とあなた方の相性など」
 タイナは座布団脇に置かれた机の引き出しから50本の筮竹を取り出した。
「いえ、今日は占いに来たわけではないアルから」
「おや、失礼ですがあなたは女性でしたか? 遠慮なさらず。それに、どの道あなた方の顔を見ながら占う予定でしたから」
 タイナが言い終わると同時に、チャムとアンドレイアの後方から、大きな斧をもったフードの男が現れた。彼は周囲に同様の斧を持った兵隊を従えている。フードの男が勢い良くフードを取ると、中から金髪の無骨な男が顔を出した。
「タイナー! そんな悠長なことをやっている場合か! 早く決断してもらおう!」
「落ち着きなさいクリフ。集中しなければ正確な占いができません」
 タイナは50本の筮竹の下部を軽く握ると、1本を抜き取った。そして残りの49本を左右両手に分けると、右手の分から1本を抜き出して、左手の小指にはさみ、左手側にある筮竹の数を数える。タイナはそれを3回続けた。
「地風升。悪くはありませんね。クリフ、その斧をしまいなさい。彼らは客人です」
「なんだー! つまらねえな!」
 クリフは斧を手放すと、ドカと音を立ててその場に座った。タイナは周囲の従者へ指示を出すと、漆塗りの底の浅い盃がチャムやアンドレイア、クリフに配られた。
「さあ、今日はレイドサイクロンと太極天の親交の始まりの日です。階段を登るように、堅実に。歩を進めてまいりましょう」
 タイナの宣言とともに、クリフが盃を乾かす。会は終始太極天のペースで進んだ。 

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

ピックアップ記事

  1. ルクシオンがまだ、ユタアース〜内側の世界〜に属していた頃の話だ。 このころルクシオンは、住人か…
  2. プロのイラストレーターの挿絵であなたの作品を一層魅力的にします! プロのシナリオライターがあな…
  3. こんにちは。 橋本橙佳です。 このエントリでは橋本橙佳が様々なクリエイタ…

Twitter でフォロー

ページ上部へ戻る
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。