第2項 私魔法が使えます!

『まずはコスチュームの変更を自在に行えなければならない。やってみろ』

「そんなこと言われても、できないよ」

エスカリョーネは音を上げた。

『全身にマナ・・・エーテルをまとうイメージを描けば出来るはずだ。エーテルは知っているな?』

「エーテルって何?動物の名前?」

『ふぅ・・・。そこから説明しなければならないか。まずはマナから説明しよう。マナとは、この世界にみちている意識エネルギーのことだ。意識エネルギーは設計図であり、動力源だ。全ての生物は中心にマナを持っている。人の形をした器があっても、そこにマナが宿らなければ生命活動が起こることはない。お前も、私も、身体の中にマナを宿している』

エスカリョーネは胸を押さえて、心臓の鼓動を聞く。

「そうなんだ。じゃあエーテルっていうのは?」

『エーテルは、人間がマナを人工的に創りだしたものだ。はるか昔、人間たちが戦争の道具として、エーテルを創りだした』

「よくわからない。マナは生き物の動力源なんだよね?あ、わかった。傷ついた人を治すためにエーテルを使ったんだ」

『最初はそうだった。しかし人間たちはエーテルの恐ろしい特性に気づいた。全ての生物が中心にマナを持っていることは先ほど話したな。それらの生物は、強固な肉体や、鎧を身にまとい戦争に向かった。体の中心にあるマナを守るためだ。肉体が少しぐらい傷ついても、マナさえ元気であればいずれ回復する。だが、肉体を無視して、直接マナを攻撃できる方法があればどうだ。どんなに強固な鎧も意味をなさなくなるだろう。マナが失われれば生物は死ぬのだ』

「エーテルを使えば、マナに直接攻撃ができるの?」

『そうだ。マナが存在している場所は、空間の三次元とは異なる。四次元と呼ばれる場所にある。エーテルはこの空間に干渉することができた。最初は飲み薬として、マナを回復させる役割を担っていた。だが次第に、マナを攻撃するための方法が模索され、武器として使われるようになる。最終戦争では有害なエーテルを撒き散らす巨大な爆弾が、世界中に投下された』

「世界中に?」

『そうだ。特にこの地域は、エーテルの干渉が強かった地域だ』

「エーテルは有害なんだよね。私たちはどうして生きているの?」

『強かった、と言っただろう。次第に害性は低くなっていった。今はエーテルこそ漂っているが、エーテルに害性は殆ど無い。とはいえ、まさかこの地域に人間が生きているとは、私達も思っていなかった。お前たちの先祖は、有害なエーテルに耐性のある人物だったのだろう』

「フレスヴェルグは、浮遊大陸の外から来たの?」

『浮遊大陸?お前たちはそう呼んでいるのだな。まあ、そういったところだ。話を戻すぞ。世界にはマナを人工的に創りだしたエーテルが漂っている。ここまではいいな?』

「うん」

『エーテルはマナと同様に、四次元の存在だ。つまりマナ—意識エネルギーによって干渉が可能。例えば』

フレスヴェルグはエスカリョーネの目の前に黄色や緑の光を放つ蝶を浮かび上がらせた。

『このように意識の力で、蝶を創りだすこともできる。身体の中に存在するマナを感じ取り、それが体の外にも広がっている感覚を掴め。やってみろ』

フレスヴェルグの合図に従い、エスカリョーネも意識を集中し始める。

『まずは自分のまわりに漂うエーテルに色を付けろ。オレンジ、紫、赤。色がついたらそれらを組み合わせて自分が着たい服をイメージしろ。服がイメージ出来たら、服の上から服を着てみる。着づらいようなら今の服を一度脱いでも構わんぞ』

「気が散るから黙ってて。なんだか出来そう」

エスカリョーネの周りに、色のついた光が漂う。

彼女は、貴族風のドレスに着替えており、魔女帽子を被っていた。

「できた!って、やっぱりこの格好なんだ」

『お前の深層心理に残っているのだろう。何か思い当たるフシはあるか』

エスカリョーネは、貴族風のドレスと魔女帽子、について思いを巡らせた。

(ハロウィンの頃になると、お母さんがよく作ってくれたっけ。この格好になって、トリックオアトリートと唱えると、お菓子がもらえた。私にとっての、魔法使いのイメージなのかな)

エスカリョーネはふふふと笑った。

「ありがとう、フレスヴェルグ。少しだけ元気が出てきたよ」

『気にするな。もはや我らは一心同体。お前の進む道に幸あらんことを』

「ありがとう。少しお腹すいたね。持ち合わせているキノコがあるから、火で炙って食べよう」

彼女は付近に落ちている枯れ木を拾って櫓を組むと、腰のポケットから火打ち石を取り出し、それを使って火をおこした。フレスヴェルグが、その手際の良さに感心しているうちに、彼女は腰のポケットから鉄の箸を取り出してキノコを刺し、キノコの刺していない部分を地面に刺し、火の側に並べ立てた。

キノコに焼き目がついた頃、彼女は箸の地面に刺さっている部分を熱そうに持つと、そのままガブリとキノコにかぶりついた。

「いただきまーす。あれ?美味しく・・・ない」

エスカリョーネはキノコを置いた。

「味がしないよ」

『私の味覚が影響を及ぼしているかもしれん。私は肉食獣だからな』

「そう、なんだね」

エスカリョーネは、味のしないキノコをポリポリと食べた。

「ねえ、私、まだ人間なのかな」

『それはわからんな。精霊フレスヴェルグの心臓を喰らった以上、体の作りも少しばかり変わっていくだろう。半人間、半精霊といったところだろうか』

エスカリョーネは膝を抱えて丸くなった。

『味がしなくとも、明日に備えて食っておけ。わずかでも栄養を取り込んでおかなくては、もたないぞ』

フレスヴェルグの言葉に、エスカリョーネは反応しないまま横になった。

(早く忘れたい。全て夢ならいいのに)

エスカリョーネの独り言は、フレスヴェルグに聞こえていたが、フレスヴェルグは何も言わず、エーテルを操り、薪の火を消した。

 

翌日。

東へ向かうエスカリョーネは、何体もの怪物に襲われた。昆虫の顔をした小さなサル、馬と牛の頭を持った双頭の人間。6本角のサイなど。どれも浮遊大陸には存在しない怪物だ。エスカリョーネはダメージを受けながらも、フレスヴェルグの尽力もあり、怪物たちを退けていった。彼女は怪物との戦いの中で、少しずつ魔装具の使い方を学んでいった。彼女には、強い学習意欲がある。

6本角のサイを退けた後のこと。

「フィンブルヴィンテル」

エスカリョーネの手元に、小さな風のせせらぎが生まれる。

「駄目だ。まだできない」

『少しはマシになったな。フレスヴェルグは風の精霊。お前の中にいる私を感じろ。その感覚を体の外に広げられれば、風が味方してくれるはずだ』

「そっか。フレスヴェルグを感じればいいんだね?胸の中に、冷たい氷のような塊がある、けれどその中心は暖かくて。その中心に焦点を当てたら、まわりの塊も暖かくなっていくみたい。氷の塊が、柔らかい膜で包まれているみたい。アイスの天ぷらだ」

『掴めたのなら、試してみろ』

「アイスの天ぷらを、大きく広げればいいんだね。フィンブルヴィンテル」

エスカリョーネの手元に冷たい風が巻き起こる。

「バルムンク!」

エスカリョーネの手元に氷の剣が創りだされた。

「できた!」

『良い傾向だ。実戦で今と同じようにバルムンクを出すことができれば、戦いはもっと楽になるだろう』

「ありがとう」

『しかし凄いやる気だな。根を詰め過ぎると、体を壊す。少し休め』

「心配ないよ。早く東の部族のところへ行かないと。お父さんが待っているかもしれないから」

『・・・そうか』

「うん、そうだよ!」

エスカリョーネは走り始めた。

(お父さんは、必ず生きてる。必ず後で合流するって言ったんだもん。だから早く行かなくちゃ。私、お父さんに抱きしめてもらいたい。そうしないと、私)

エスカリョーネは喉の奥まで出かかった言葉を飲み込み、東の部族の集落を目指して走った。そして、まだ日も高い時間に、目的の集落へとたどり着くことができた。彼女は息を切らしながら、1人つぶやく。

「ここが、東の部族の集落、だよね」

周囲を見渡しても誰もいない。静寂に包まれている。

「誰かいませんかー?」

見れば煙突から白い煙が出ている。人はいるようだ。

(夕食の準備をしているのかな?お風呂を焚いているのかも)

エスカリョーネは淡い期待を抱き、煙の上る家まで走っていく。この2日間、水も浴びていない。血と汗と泥でべたついた身体を清めたいと考えていた。

「すみませーん」

エスカリョーネは家のドアを叩いた。返事はない。彼女がドアの隙間から中を除くと、中からも外を覗く瞳があった。

「わぁ!」

エスカリョーネは驚いて飛び上がる。

「ど、どういうこと」

「驚かせてしまってすみません」

家の中から出てきたのは、スタイルの良い細身の女の子。艶やかな長い髪が、泥に汚れている。

「勝手に上がってしまって、本当にすみません。兄を探して旅をしていたら、森で迷ってしまって、この集落にたどり着いて。まわりには怪物がいたので、外にいるのが怖くて。家の中に上がってしまいました。ごめんなさい!」

女の子は頭を下げた。エスカリョーネはあたふたして女の子に顔をあげるよう言った。

「だ、大丈夫。私もこの集落の住人じゃないよ。それに、集落の人だったとしても、外の怪物から逃げるためだったら仕方ないと理解してくれるよ。ただ、煙突の煙は消しておいたほうがいいかも」

「煙突・・・?あっ、気づきませんでした。少し前に誰かいたのでしょうか」

「そっか。私はエスカリョーネ。あなたは?」

「私はミストルティンって言います。ミストって呼んでください」

「じゃあ私はエスカでいいよ。ミスト、この集落で、男の人を見なかった?」

「わからない。すぐにこの家に入ってしまったから」

「そっか。それなら全部の家をくまなく探そう!ミストも手伝って!」

エスカリョーネは家を飛び出し、家という家を訪問して回った。剣術に長けた部族の集落だけに、どの家にも飾り台が設置されている。しかし飾り台に剣はなく、まるで全集落民が戦争にでもでかけたような様相を呈していた。

「エスカ、こっち」

ミストルティンが何かを見つけた。それは、小屋の中で横たわる老婆だった。

「おばあさん、この集落はどうなっているの?誰もいないよ」

エスカリョーネが質問を投げかける。老婆はかすれた声でそれに答えた。

「集落の人間は、皆戦争に向かった。昨日、世界の果てが消えちまっただろう。そこから化け物たちが近づいてくるのを、見張りのもんがとらえたんだ。それで一族総出で、戦争に向かった。わしらのような動けない老人だけが、この集落には残されとる」

老婆はゴホゴホと咳込んだ。

「なぁに、この集落の人間は強い。すぐに化け物を掃討して、ここに帰ってくる。元気のいい若者たちでな。そうさ、例えばあんな風な顔をしとった」

老婆の指差した先を、エスカリョーネとミストルティンも見やる。そこには、巨大なカラスに掴まれた村人の姿があった。

「きゃぁあ!」

「ミスト、下がっていて。ファンタズマ・アーキ」

エスカリョーネは、コスチュームを変更した。

「フィンブルヴィンテル!」

エスカリョーネは、カラスに向けて風を放った。カラスは風を正面から受け、高い声で悲鳴を上げた。足に掴まれていた村人が空中から落下する。エスカリョーネは落下点まで走ると、わずかに上昇気流を巻き起こして村人の落下速度をゆるめ、村人を両手で抱きかかえた。

しかしながら村人は既に絶命しており、カラスに食い破られたのか、目玉がなかった。エスカリョーネは一瞬目を背け、それから村人をそっと地面において、冥福を祈った。

一方カラスは体勢を立て直し、エスカリョーネに向かってこようとしていた。エスカリョーネは手元に冷たい風を巻き起こし、バルムンクを召喚する。

「お前を絶対に許さない!」

彼女はカラスの突撃をわずかにかわし、剣閃を煌めかす。カラスは僅かな悲鳴を上げ、絶命した。

『初めて実戦で成功したな』

「こんなことを何度繰り返せばいいの?」

エスカリョーネはつぶやいた。胸が締め付けられるように痛い。

「エスカ、後ろ!」

カラスを倒したエスカリョーネが、後ろを振り向くと。

そこには100体以上の怪物たちが、村人の死体を持って待機していた。

「「面白い能力を持った人間がいるな」」

「「プルスラス様への手土産に、あの人間の頭を持って帰ろうぞ」」

怪物たちはケラケラと笑っていた。

エスカリョーネは、これから行われる虐殺が頭に浮かび、後ずさる。

(せめてミストだけでも、守らないと)

エスカリョーネは怪物に背を向けて走りだした。これが襲撃の合図となった。100体の怪物が、五月雨のように集落へ襲いかかる。怪物は家を突き破り、エスカリョーネとミストルティンの方へ向かってくる。病に倒れている老婆は、怪物によって蹂躙された。エスカリョーネは老婆を助けることが出来なかった。

「エスカ、おばあさんが!」

「わかってる!でも、あんなの助けられるわけないよ」

エスカリョーネは唇を噛んだ。

「ミスト!とにかく走って!私があいつらを引きつける。森の中で合流しよう」

『相手が固まって行動している状況では勝機が見えない。まずは相手を分断することだ。視界を奪え』

エスカリョーネはコクリと頷くと、胸に手を当て、フレスヴェルグを感じる。

「フィンブルヴィンテル!」

激しい風があたりを襲った。怪物の目をもってしても、視界を確保することが難しい風だ。風が止んだ時には、エスカリョーネの姿は消えていた。怪物たちは手分けして森を探索することに決めた。

『狙い通り、相手が別れて探索を始めたな。ここからは個別撃破だ。バルムンクは召喚できるか』

「大丈夫」

エスカリョーネは小さくフィンブルヴィンテルと唱えると、氷の剣を手にしていた。

『よし、後はどうやって怪物をここに誘い込むかだ』

「エスカ。エスカ!」

「どうしたの?ミス・・・、わぁっと!」

エスカリョーネは飛び上がった。ミストルティンの手のひらに、小さな雷が生じていた。

「私、魔法が使えます!」

エスカリョーネは、ミストルティンの一生懸命な表情を見て、自然と笑ってしまった。

「ありがとう、ミスト。じゃあ、怪物を少しずつおびき寄せてもらえるかな」

「わかりました!」

ミストルティンは雷を操って弓と矢を創ると、それによって怪物を射た。

その雷は怪物を仕留めるまでには至らないが、怪物の気を引く効果は十分得られた。怪物は何人かの仲間を引き連れ、矢の飛んできた方へ足を踏み入れる。そこで待ち伏せていたのがエスカリョーネだ。

彼女はバルムンクを駆り、怪物たちを切り裂いていく。

「ミスト、その調子でお願い!」

2人の連携は練度を増していった。撃破した怪物が10体を超えたあたりで、怪物たちも異変に気づいた。怪物たちは集落に集結し、籠城することを決めた。

『一難は去ったな。これで逃げるチャンスが出来た』

「がむしゃらに戦ったけど、剣術に長けた部族が、あんなに簡単に殺されてしまうなんて。何が起きているの?あの怪物は何者?」

エスカリョーネは独り言のようにつぶやく。それに答えたのはミストルティンだ。

「ズフィルシアの四方に張り巡らされた障壁が消えてしまったんです」

「ズフィルシア?」

「私の故郷の側にあった、巨大な国です。強い力を持った皇帝が治める土地で、多くの魔物が生息しています。皇帝の直下にはズィーベンアルムという7人の神官がいて、その7人が分担して土地を治めていました」

「ズフィルシア、聞いたことないな」

「おそらく、私が住んでいたのはエスカの世界と別の次元。私の住んでいた地域には、巨大な障壁がありました。決して人や魔物が通ることの出来ない真っ暗な障壁です。けれど3日前、突然その障壁が消えてしまいました」

「世界の果てが消えた日だね。誰かが浮遊大陸とズフィルシアをつなげたんだ」

エスカリョーネは3日前に思いを馳せる。

(あの出来事さえなければ、お母さんは)

憎悪がふつふつと湧いてくる。フレスヴェルグはエスカの感情を感じながらも、何も声をかけなった。

「教えてくれてありがとう。ミストはお兄さんを探しているって言ってたね」

「はい。兄はまだ障壁が存在していた頃、障壁の先に行くんだと言って家を出ました。もちろんそんなこと出来ないと皆止めたのですが。兄は姿を消してしまって。兄は聡明な人物でしたから、もしかしたら私たちにはわからない方法で、障壁を越えることが出来たのかもしれません」

「お兄さんのことが好きだったんだね」

「・・・はい。尊敬していました。このクリスタルのペンダント。これは兄からもらったお揃いのペンダントなんです。これを持っていたら、いつか兄に会えるような気がして。会いたいなって、思い続けて。障壁が消えたとき、家を飛び出してこちらに来ちゃいました」

ミストルティンはテヘヘと笑う。エスカリョーネも、愛する家族に会いたい気持ちは誰よりもわかる。

「きっと会えるよ。信じて、歩き続けよう?」

「エスカ、ありがとう」

2人はニッコリと笑いあった。少し声が大きかったのか、フレスヴェルグが黙るよう指示をした。2人は慌てて口をつぐむ。フレスヴェルグは別の気配も捉えていた。

『誰か来るぞ。人影だ』

人影はエスカリョーネたちに目もくれず、集落の方へ向かっていく。

「あ・・・あ・・・」

それは、エスカリョーネの父親だった。父親は娘との約束を果たすために、傷だらけになりながらも集落までたどり着いたのだ。だが、その姿はすぐに怪物たちに見つかってしまう。父親が顔を上げ、怪物たちと目を合わせた。

「「くっく。死神の村へようこそ」」

怪物たちはすぐに父親を囲い、下卑た笑みを浮かべた。父親は膝を折り、その場に座り込む。彼にはもはや抵抗する気力も残っていない。ただ涙を流し、何かに祈りを捧げていた。

「お父さん!!」

怪物たちの刃が父親に迫る。エスカリョーネが叫んだのはこの時だ。父親は娘の声を聞き逃さなかった。最後の瞬間、父親とエスカリョーネは視線を合わせた。父親は誰よりも穏やかな愛溢れる目で、娘を見つめた。そして次の瞬間には、首をはねられていた。

「嫌だ!!!嫌だ!!!お父さん!!!!」

「エスカ、ダメだよ!見つかっちゃう」

「お父さん!お父さん・・・お父さん」

エスカリョーネは涙をぼたぼたと流していた。胸が苦しい。動悸が激しくなっている。握りしめた拳も震えていた。

『先ほどの行為はまずいぞ。怪物に気づかれた。走って逃げろ!このままではお前もミストルティンも無事では済まない。急げ!』

フレスヴェルグの掛け声が、エスカリョーネの胸にこだまする。ミストルティンも不安そうにエスカリョーネの背中をさすっていた。

「エスカ、逃げよう?正面から戦って勝てる数じゃないよ」

「・・・ごめん」

エスカリョーネは覚悟を決めていた。

「私は残って戦う。ミストは木陰に隠れていて」

『馬鹿者!冷静になれ!お前はまる3日間、飲まず食わずでここまで来た。体力を消耗している状態で、乱戦など。自殺行為だぞ』

「関係ない!私は・・・」

エスカリョーネの前に激しい風が吹く。

「人の子だ!親を殺されて、黙っていることなんて、できない!」

彼女はバルムンクを携え、怪物の一団へと向かっていった。

フレスヴェルグは、少女の暴走を止める手段を持たなかった。

 

 

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