飛んでいった頭を拾い上げ、身体とくっつけることで、プロスフォラは息を吹き返した。彼は一瞬記憶が飛んだことを不思議がっていたが、ローディアとパンサーは何も言うことができなかった。2人の後ろには、拘束具を着けられた状態のディーオーエムオーが転がっている。

 

『セフィロスはオルヴェンスワン西部の都市トリスに滞在している』

プロスフォラの情報を元に、ローディアとパンサーはトリスへ向かうための手配を進めていた。

「バギーでいいだろ!」

「絶対にクーペがいいわ。雨が降ったらどうするの」

軽装馬車のバギーと、箱型馬車のクーペのどちらにするかで、2人は喧嘩していた。9年前は同じだった趣向も、すっかり別々になっている。

「ぷっくく。随分変わったな、ローディア。でも俺は今のほうが好きだぜ」

「あなたこそ。昔はあなたのこと、全部わかってた。ずっとずっとあなたのことを見て、同じように生きられると思ってた」

ローディアはパンサーに手を伸ばした。

「今は、あなたのこと、全然わからない。だけど今のほうが、あなたのことがずっと気になっている」

「なあローディア。お前にとっては、この9年間があってよかったんじゃないか?」

ローディアはこの言葉には何も答えなかった。

そこへ現れたのはディーオーエムオーだ。手を後ろで組んでスタスタと歩いてくる。

「お前はディーオー↑エムオーかーい♪ お前はディーオー↑エムオーかーい♪」

ディーオーエムオーは歌を歌いながら2人に近づいてくる。

「お前がディーオーエムオーだー♪」

ディーオーエムオーはパンサーを指差した。

「いや、拒否したいんだが」

「なんでだい! お前は神と対称性を持ちたくないのかい!?」

ディーオーエムオーは地団駄を踏んだ。

「例えばディーオーエムオーを90度回転させたときにお前と同じ顔になったら嬉しいだろう。私はそういうことを言っているんだぞ」

「誰か喜ぶやついるのかよ・・・。ローディア、ディーオーエムオーは放っておいて準備を進めよう。馬車はクーペでいい」

ローディアは頷いて、馬車に関する書類を記載し始めた。

「私の座席はどこにあるんだい?」

ディーオーエムオーがローディアの手元を除きこんだ。

「キャッ、びっくりさせないで。あなたの席は、そうね。車輪にでも縛り付ける?」

「それでは私が高速で回転してしまう! お前たちと同じ顔になってしまうぞ!」

「大丈夫。絶対に同じ顔にはならないから」

ローディアの言葉は辛辣だった。

ディーオーエムオーはシュンとしてその場で体育ずわりをした。

 

3日後、準備が整い、彼らの元へ馬車が到着した。3日間体育座りをしていたディーオーエムオーには、とんでもない量のホコリが積もっていた。

「あー、もう!」

ローディアはディーオーエムオーに積もったホコリをバシバシとはたいて、無理やり馬車に乗せた。セフィロスの居るトリスへ向かって進む馬車。後部座席でローディアはとパンサーに挟まれて細長くなっているディーオーエムオーは言う。

「お前たちに忠告しておこう。もしかしたら私とセフィロスが対峙した際、神同士の対消滅が起こり、世界が滅亡してしまう危険性がある。つまり我々が世界滅亡のトリガーを引くことになるが、それは覚悟の上だな?」

「あー、はいはいそうね」

ローディアはドアに肘を置き、頬杖をついて、軽くあしらう。パンサーはバタフライ効果の事例を見ているから、少しばかりディーオーエムオーの言葉を気にしていた。

「なあ、ディーオーエムオー。それはどれくらいの確率なんだ?」

「セフィロスが私と同じ姿であれば、対消滅が起きる可能性は高いだろう」

「わかった。じゃあ俺達が先にセフィロスと会って、同じ姿かどうか確かめるよ」

パンサーは内心安堵していた。もしもディーオーエムオーとセフィロスが同じ顔なら、プロスフォラが気づいているはずだ。

「ねえパンサー、あなたこのジャガイモに優しくない?」

ローディアがつまらなそうに言う。パンサーは苦笑する。

「そうかな? 変なやつだと思ってみているけど」

「私は神ぞ! ディーオーエムオーぞ! どうして君たちはジャガイモで話が通じているんだい?」

ディーオーエムオーはパンサーを鬼の形相で見ていた。パンサーは目を合わせないようにして目的地への到着を待った。

 

馬車がトリスの中心地に存在する教会へたどり着いたのは、数刻後だ。彼らはプロスフォラから渡された招待状を見せ、教会の内部へと歩を進めていく。そしてパンサー、ローディア、ディーオーエムオーはセフィロスの滞在する部屋にたどり着いた。

 


第1項 2体目の神
第2項 フラクタル
第3項 不完全性定理
第4項 バタフライ効果
第5項 対数螺旋
第6項 パラドックス
第7項 神の方程式
第8項 対称性
第9項 なぜ何もないではなく、何かがあるのか
第10項 フィボナッチ数
最終項 ゼロ

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