クレイモアクロニクル エピローグ

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 ヴァリアスはこの日、アトラスをサイドランドの首都キョウトに招待していた。この町は四季の彩りが豊かで、木々が生き生きと育ち、空気も澄んでいる。
 2人はここへ牡蠣を食べにきていた。潮の香りが口の中に広がっていく。
「どう? アトラス」
「うむ、美味いがここは俺の生まれた土地では無いだろうな。海から遠いしな」
 アトラスは真顔で言った。ヴァリアスはそれがおかしくて吹き出してしまった。2人はよくこうして、アトラスの故郷探しという名目のもと、サイドランドやヴィヴァリン、ルクシオン北部のグルメを楽しんでいた。アトラスの記憶にある、『潮の香り』というキーワードだけを手がかりに旅をしているのだが、最近は単なるこじつけであることも珍しくない。
「じゃあ、ここも違うね。難しいわね、アトラスの故郷探し」
「ふふ、そうだな。そう簡単に見つかれば苦労はない。見つかったときの喜びに期待しているよ。それまで、歩き続けよう」
「そうだね、見つかるまでは、元気でいてよね」
 ヴァリアスは本心からそう願っていた。
 神と人間との戦争を宣言したアトラスは、戦いの輪廻の中に組み込まれた。毎日のように戦場へ出て、人々を鼓舞し、時に自ら大剣を振るう。いつ倒れてもおかしくないのだ。ヴァリアスは、自分を救ってくれたアトラスを独り占めしたいと考えていた。けれども時代がカリスマを求めており、自分だけのものにしてはいけないとも、理解していた。
「ねえ、アトラス」
「どうした?」
「ううん」
 ヴァリアスは内なる想いを胸に秘め、歩むことを決めた。そして戦争を繰り返す中で芽生えていた、もう1つの想いをアトラスに伝える。
「アトラス、私、戦争孤児を救うチームをつくりたいの。あなたと四天王がいれば、戦争に勝つことは出来るでしょう。けれどその足下には、傷ついた子ども達が、いっぱいいる。復元者も人間も関係なく、全員を私は救いたい。貴方が私を救ってくれたように」
 ヴァリアスの想いはまっすぐだった。アトラスも微笑する。
「わかった。俺に出来ないことを、お前なら出来るかもしれない。ヴァリアス、よくここまで一緒に来てくれた。ありがとう」
 アトラスは大きな掌でヴァリアスをなでた。ヴァリアスは、変わらぬ温かさをもったアトラスの掌を、ぎゅっと握った。
「私の方こそ、この掌に何度も救われたよ。ありがとう」
 ヴァリアスは屈託なく笑った。

 

 『デモリューション』の結成が発表されたのは、1ヶ月が経った後だった。最初はヴァリアスとアトラスの確執が噂された。クレイモアから完全に独立し、戦場の復旧を助けるチームとして、動いていくことが決まったためだ。
 とはいえ、ヴァリアスの活動に反対するものはいなかった。多くの人々は、ヴァリアスの行なおうとしている活動の意義を理解していたのだ。まだ幼い子ども達にとっては、人間も復元者も関係がない。隔たりの無い世界は、そこから築かれていくのだと。
 復元者、人間の中にも、『デモリューション』へ資金援助をする団体は現れた。『デモリューション』は力こそ無かったが、少しずつ世界を変え始めていた。

 
 アトラスは人間と決別することで、復元者をまとめ、神に抗うことを決めた。
 四天王は、そんなアトラスの振る舞いを信頼し、同じく神に抗い、復元者のために世界を変えようと決めた。
 ヴァリアスは、アトラスが決別した人間を救うことも考え、違う道を歩んだ。

 
 彼らは皆自分なりに考え、悩み、答えを出した。
 神に与えられた答えではなく、自分の導き出した答えに向かい、走り出した。

 
 それはまさに。
 自分という咆哮をあげる――クレイモア。
 世界はいま、変革の時を迎えようとしていた。




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《クレイモアクロニクル目次》
第1項 アトラスという男
第2項 ビルシュタインズ
第3項 ビルシュタイン
第4項 山賊ゼノン
第5項 パティ・ゼクセリア
第6項 スヴィーナ
第7項 忍びの森
第8項 疾風の森を駆ける王者
第9項 アルネスト・リークラク
第10項 忍者エッジ
第11項 リリィ・ゼクセリア
第12項 村医者ルドルフ1
第13項 村医者ルドルフ2
第14項 村医者ルドルフ3
第15項 ホリデュラ侵攻
第16項 ペルソナ
第17項 救い
第18項 黒鉄の仮面
第19項 カリスマ
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