第11項 リリィ・ゼクセリア

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 『疾風の森を駆ける王者』の伝説、アルネストの経済的支援、暗部を任せることのできる人材の獲得により、アトラスのチームはさらに求心力を高めていた。チームは肥大化していったが、アトラスは定期的にメンバーを物理的に同じ場所へ集め、顔合わせの場を設けた。これはコロケーションと言う手段で、チームの連帯感を高める上で大きな役割を果たした。
 

 単なる烏合の衆でなくなっていく彼らを見て、最も心をざわつかせていたのはリリィ・ゼクセリアだ。彼女は聡明であったが故に、各地で頻発している要人の暗殺が、忍びの仕業であることを理解していた。忍びの森を焼き払っても忍びは消えないという事実と、忍びの森を焼き払った自分の選択が誤りであるという事実を、彼女は受け入れざるを得なかった。
『それなら、叛逆の目は早く摘み取る他無いわね』
 彼女は自分の過ちを受け入れ、反省をした。そして失敗を取り返すための手段として、アトラスのチームへの総攻撃をビルシュタインに提言した。ビルシュタインもいずれは必要なことだと理解を示し、アトラスのチームが本拠を置く、シーガル付近での決戦を計画した。
 ビルシュタインズからの使者が、決戦の提案をした日。アトラスもこれに応じ、ビルシュタインズと正面から対峙することを決めた。ゼノンも腕を鳴らす。各地に散らばるメンバーを収集し、2000名近い戦士達がシーガル均衡の山へ集まっていた。そして決戦の日は到来する。

 決戦の日、アトラスのチームは百人百様の服装でビルシュタインズと向かい合った。ビルシュタインズは全員が黒衣で身を固めていた。ビルシュタインズはシーガルの町を背にし、アトラスのチームと対峙する。
 アトラスが咆哮をあげると、ゼノン達は雪崩のようにビルシュタインズへと襲いかかった。ゼノンらの気概に圧されたのだろうか、決戦開始後、数刻もしないうちにビルシュタインズは劣勢に追い込まれ、シーガルの街中へ撤退を余儀なくされた。ゼノンとアトラスはビルシュタインを仕留めるため、シーガル市街地へとなだれ込んだ。
 シーガルの街中は、ゼノンやアトラスが想像していたよりも静かだった。ゼノンを先頭に、チームはシーガルの路地を闊歩していく。このとき彼らは、少しずつ視界が悪くなっていることに気づかなかった。白い煙が少しずつあたりを満たしていた。煙はシーガルの路地を進むたびに、より白く濃くなっていく。ゼノンが気づいた時には、数ベルト先を見ることがやっとだった。

 ここまで来て、ゼノンはビルシュタインズの罠にかかったことに気づいた。彼は前後左右に意識を集中し敵襲に備えた。しかし敵は、上空からやってきた。
 シーガル市街地の家々の屋根から、百人百様の戦士達が降り注ぐ。ゼノンの一団は、この奇襲によって完全に統率を失った。ビルシュタインズを黒衣の一団と認識していた彼らは、味方が自分たちを襲撃しているようにしか思えなかったのだ。疑心暗鬼がチーム内に生まれ、ゼノンのチームは仲間割れを起こした。奇襲を仕掛けたビルシュタインズの戦士は50人に満たなかったが、ゼノン達は1000人の敵に囲まれているような錯覚を起こしただろう。
 リリィ・ゼクセリアは、敵軍が混乱に陥ったことを確認すると、すぐさま遠距離攻撃による追い討ちをかけた。黒衣の戦士達が、白い煙に覆われた路地に向けて銃器を構え、弾丸を乱射する。スヴィーナを筆頭とした復元者の部隊も、神獣を召喚してゼノンのチームへ襲いかかった。前線は完全に崩壊していた。

 アトラスはビルシュタインズの奇襲を受けた際、ここを引き際と捉えて、すぐさまチームへ撤退の合図を送っていた。咆哮をあげ、自分の居場所を戦士達に伝えようとしていた。喧噪に包まれた街中でも、アトラスの声は良く通った。戦士達はアトラスの声を頼りに路地を駆け、視界の晴れた場所まで撤退する。アトラスはある程度視界の晴れた場所まで退くと、押し寄せるビルシュタインズの方へ翻って剣を振るい、戦士達の撤退を支援した。
「アトラス、ここは俺に任せて、お前は皆を導いてくれ」
 一番先頭で戦いを指揮していたゼノンが、アトラスの元まで辿り着いた。
「ゼノン。頼んだぞ」
「無論だ。我が名はゼノン。アトラスの意思を汲み、神に立ち向かうものだ! ここから先へ進みたければ、俺を倒していくがいい!」
 ゼノンは両手でハルバードを握ると、鬼神のごとき働きでビルシュタインズを蹴散らしていった。リリィは犠牲者が無闇に増えることを良しとせず、部隊に撤退を指示した。アトラスのチームは多大な犠牲を払ったが全滅は免れた。
 だが、この敗北により、アトラスの求心力は大きく失われた。 




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《クレイモアクロニクル目次》
第1項 アトラスという男
第2項 ビルシュタインズ
第3項 ビルシュタイン
第4項 山賊ゼノン
第5項 パティ・ゼクセリア
第6項 スヴィーナ
第7項 忍びの森
第8項 疾風の森を駆ける王者
第9項 アルネスト・リークラク
第10項 忍者エッジ
第11項 リリィ・ゼクセリア←いまここ
第12項 村医者ルドルフ1
第13項 村医者ルドルフ2
第14項 村医者ルドルフ3
第15項 ホリデュラ侵攻
第16項 ペルソナ
第17項 救い
第18項 黒鉄の仮面
第19項 カリスマ
クレイモアクロニクル エピローグ

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