atlas

 ゼノンの従える山賊達を率いて、アトラスは山で兎狩りを行なっていた。
「何故俺が兎を狩っているんだ」
「ゼノン、小言を言うな。俺達にはまだスポンサーがいない。自給自足で耐え忍ぶ他無かろう」
「それは理解しているつもりだが」
 ゼノンは小言を言いながらも、アトラスの教えに従って罠を仕掛け、兎をそこへ呼び込み捕まえていった。
「ある程度は俺達がやっていたように、略奪するしかないんじゃないか。でなければ香辛料も買えん。うむ、元気な兎だ」
「それは許さん」
 アトラスは強く言う。
「責任を持ち、尊敬を集め、公正で誠実なものにこそ、人々は協力してくれる。俺をリーダーとして認めたからには、このガバナンスは徹底してもらうぞ」
 ゼノンと山賊達は、自給自足の立場にあろうとも、決してブレることの無いアトラスの熱意に圧されながらも、安心感を抱いていた。
「心配するな。そろそろヴァリアスが、俺達と利害を一致するものを探しあてるはずだ」
 アトラスは、復元者の期待を背負い、叶えることをプロジェクトと捉えていた。プロジェクトとは独自性のある有期的な業務のことだ。そのプロジェクトに取り組むにあたって、アトラスが最初に行なったのは、ステークホルダーの特定だった。ステークホルダーとは利害関係者のことで、プロジェクトにプラス又はマイナスの影響を及ぼすと考えられる人々のことだ。
 アトラスは自分たちの置かれている立場を良く理解していた。つまり復元者でありながら、神に組みしない。これに対して協力的なステークホルダーを探すならば、同じようにビルシュタインズに対抗している復元者達だ。アトラスはヴァリアスに、そういった復元者の集団を探すよう指示を出した。そして。
「アトラス、見つかったよ」
 ヴァリアスの吉報が訪れる。シーガルの復元者達の中に潜入した彼女によれば、ヴィヴァリンとサイドランドの国境にある『疾風の森』に、ビルシュタインズと利害を反する復元者達が潜んでいるという。
「といっても噂話だから、信憑性はあまり期待しないで」
「十分な足がかりになる。感謝する」
 アトラスは大きな掌でヴァリアスの頭をなでた。ヴァリアスは頬を赤らめる。

 アトラスは50名程度の山賊と共に、『疾風の森』へ歩を進めた。山賊の中には、このような少ない戦力でビルシュタインズと遭遇すればひとたまりも無いと不安を抱くものもいたが、アトラスの落ち着き払った姿を見て、勇気を振り絞った。そして『疾風の森』に到着した一行を迎えたのは、忍びと呼ばれるモノ達であった。
「去れ、復元者達よ。この森は人間も神も立ち入ることを禁じられた森だ」
「遥か古来より、サイドランドにすまうと言われた忍びの一団か。まだ存在していたとはな」
 アトラスは姿を見せない声の主に対し、不敵な笑みを浮かべて言う。
「それでも協力してもらわねばならない。時代はいま動いている。この森さえもいずれは人間や神によって冒されるかもしれぬ。我々はいま、人間にも神にも抗い、全ての復元者が自らの意志で生きることの出来る世界を創るための、礎となるべく動いている。そなた達の力を貸してほしい」
「断る。我々は忍ぶ者。時代の表舞台に出ることは許されぬ」
 両者の交渉は平行線を辿っていた。

 そのとき、後方に多数の馬の足音が聞こえた。1000は下らないその足音は、ビルシュタインズの一団のものだった。
「まさか先客がいるとはな」
 ビルシュタインは足を止め、アトラスを見やった。仮面の男が森に並び立つ。
「見たところ復元者のようだが、忍びの者に加担するのであれば容赦はしない。神に歯向う復元者が存在していてはいけないのだ」
 ビルシュタインは携えていた剣を抜く。
「忍びの者よ、意志は変わらぬか。今ならば神も、お前達を許してくれよう」
 忍びの者の返事は無い。ビルシュタインは肩を落とす。戦いは避けられない。
 それを見たアトラスはビルシュタインとの決戦を心に決め、ゼノンに視線を送った。被我兵力差は50対1000。アトラス達に勝ち目は無いように見えた。それでも、アトラスは狭い山奥での戦いに勝機を見いだしていた。





《クレイモアクロニクル目次》
第1項 アトラスという男
第2項 ビルシュタインズ
第3項 ビルシュタイン
第4項 山賊ゼノン
第5項 パティ・ゼクセリア
第6項 スヴィーナ
第7項 忍びの森←いまここ
第8項 疾風の森を駆ける王者
第9項 アルネスト・リークラク
第10項 忍者エッジ
第11項 リリィ・ゼクセリア
第12項 村医者ルドルフ1
第13項 村医者ルドルフ2
第14項 村医者ルドルフ3
第15項 ホリデュラ侵攻
第16項 ペルソナ
第17項 救い
第18項 黒鉄の仮面
第19項 カリスマ
クレイモアクロニクル エピローグ

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