第29項 還元者

max

 舞台は変わって、マタリカ大陸グルジア。
「ルドルフ、いるかな!」
 スヴィーナが慌てた様子でクレイモアの司令室に入ってきた。

「なんだ、まだマタリカにいたのかスヴィーナ。もうアトラスは総攻撃をしかけてしまうぞ」
「ねえルドルフ。ようやくあの、エルフィって子の能力がわかったの。あの子はどこにいる?」
「エルフィはさらわれたよ。いまはエレメンシア大陸にいるようだが。マックス達が追っている」
「それほんと? 大丈夫なんでしょうね」
「どう、やら。青年の情熱に全てはゆだねられた。それで、彼女の能力とは?」
「ええ」
 スヴィーナは息を整えて、言う。

「彼女は還元者よ」
 ルドルフは、額に皺を寄せる。スヴィーナは続けた。
「物質であれば、あらゆるものを分解し、土塊に戻してしまう。生き物であれば、在りし日の姿を取り戻させてしまう。それが還元者よ。彼女が連れていた馬がいたでしょう。あの馬は、500年前に精霊王が飼っていた馬だとわかったの。彼女は子どもの頃、あの馬を現世に還元した」
「万物の法則が乱れるな。ヒトが死んだらあの世へいく、こればかりは一方通行だと思っていたのに」
 ルドルフは頭を抱えた。スヴィーナは胸を突き出してルドルフに詰め寄る。
「まだ彼女は自分の力に自覚が無いと思うわ。けれどもし、彼女の力が目覚めちゃったら」
「彼女は世界にとって脅威となる。そうなる前に終わらせるしかないのか」
 ルドルフは司令室の窓から、空を見上げた。
「スヴィーナ、飛行系の神獣を出せるか。エレメンシアへ飛ぶぞ」
「その必要はないぞい」
 ルドルフの命令を遮ったのは、プロフェッサーPO。

「こないだ発掘した空中戦艦。わしの手で修理しといた。ブイ!」
 ルドルフはスヴィーナと顔を見合わせて、笑った。

***

 邪神ディアボロスから発せられた瘴気は祭壇を侵蝕し尽くし、その周りの森林にも影響を与え始めていた。黒ずんだ木々は自重に耐えきれず折れ、そこから紫色のゴム状の何かが生まれていた。

「どーすんだよ、これ」
 エドガーは周りの景色が現実とは受け入れ難かった。隣を見るとエティナも震えている。エドガーは軽く彼女を支えてやって、マックスの方を見やる。
「マックス、エルフィは大丈夫か?」
「なんとか、目を覚ましてくれたよ」
 マックスはエルフィを抱きかかえて、彼女の様子を伺っていた。
「マックス、私」
「エルフィ。よかった。俺のことを覚えていてくれて」
「私、自分のことがわかっちゃった。私、あの怪物と同じ穴の狢よ。だからあいつを連れてこられた」
 彼女は小さな肩をブルブルと震わせていた。エルフィは、何かに縋るようにマックスの服の裾をつかんだ。服は糸――粉へと還元されていた。

「ああ、私――。だめだ」
「エルフィ。信じろ。君は俺たちと同じ、ヒトじゃないか」
 マックスは涙声でそう言うと、エルフィを抱きしめた。エルフィは、マックスが信じてくれる――その安心感で、目覚め始めた自分の力を何とか押さえ込むことができた。
「マックス! 祭壇が崩れるぞ!」
 エドガーが叫んだ。祭壇は瘴気による腐食に耐えられなくなり、崩れ落ちた。邪神ディアボロスは辺りを見まわし、呻くように言った。

『セフィロスが生きているようだな』
 邪神は15ベルトの巨体をゆっくりしゃがみ込ませると、オルヴェンスワンの方向へ勢いよくジャンプした。空が暗闇に染まっていく。見たことのない蟲が、辺りに発生していた。マックスはその蟲をブレイブソウルで切り裂いた。
「エルフィ、行こう。ブレイブソウルならやれるかもしれない」
 エルフィはこくりと頷いて、エシュロンを呼び出した。



《第3部マクシード・ライゼンハルト目次》
第1項 マクシード・ライゼンハルト
第2項 エンドラル・パルス
第3項 クラリス・レイヤー
第4項 エドガー・ラルティーン
第5項 将軍ルドルフ
第6項 復元者スヴィーナ
第7項 アトラス

第8項 エルフィ
第9項 ヴァルマサルサ
第10項 レイブン
第11項 人造の神
第12項 レイ
第13項 龍王プロメテウス
第14項 アルバ・ベータ
第15項 狂人達

第16項 グルジア侵攻
第17項 会談
第18項 停戦友好条約
第19項 72(セブンティツー)
第20項 1人の人間
第21項 決裂
第22項 プロフェッサーPO
第23項 エッジ
第24項 神の光

第25項 戦場の男女
第26項 カリアス・トリーヴァ
第27項 儀式
第28項 邪神ディアボロス
第29項 還元者←いまここ
第30項 光
第31項 セフィロス
エピローグ3

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