第25項 戦場の男女

max

 ルドルフはアトラスから届いた暗号文を解読し、熟考していた。
「不味いな。ここからじゃ兵を送ろうにも時間がな。俺とゼノンは前線を維持しなければならんし。エッジの足なら、間に合うか」

「『準備が整い次第』という書き方だと、日にちが分かりませんね」
 ルドルフに重用されていたマックスが、横から口を挟んだ。ルドルフはくすくすと笑う。
「そうだな。この文章はあまり良い文章ではない。受け手の想像力でいくらでも解釈ができてしまう。攻撃は今日かもしれんし、1ヶ月後かもしれん。アトラスという男は用心深い。敵の兵力を算出し、それよりも兵力が多くなるように準備をする。部隊全員分のスピリットを用意して戦争へ向かう。そういう男だ。とはいえ大量破壊兵器がまた使用される前に、仕留めたいだろうからな」
 ルドルフは、3日以内に総攻撃は行われるだろうと読んでいた。これ自体想定でしかないが、この想定に対してどう動くか、知将の腕の見せ所だ。

「時にマックス。お前ならどうする」
 ルドルフは、まだ若い青年のアイデアを求めた。新しい発想を重用するのも、ルドルフを名将足らしめる要素だった。
「ルドルフさん、変なこといっても良いですか」
「もちろん、使えるかどうかは俺が判断する。自由に話してくれ」
「カリアス・トリーヴァに、協力してもらえるよう、話せませんか」
「それは面白い」
 ルドルフは唇を舐めた。

「カリアスも、神による人間の滅亡を防ぐため、この世界に降り立った超越者だ。いまのアトラスと目的は一致している。人間の使っている、航空機とやらを借りられれば、エレメンシア大陸にも時間をかけずに兵を送り込める。しかしどうやって交渉する? ファルコンのフォルス提督は聞く耳を持たないぞ」
「俺に、ゼノン軍のレイを貸してください。2人でファルコンを越えて、カリアスに話をしてきます」
「龍王の息子か。わかった。やってみろ。こちらは個別にエッジとスヴィーナをエレメンシア大陸に向かわせておく。頼んだぞ、マックス」
 ルドルフはマックスの両肩に手を置き、青年の目をまっすぐ見た。マックスは敬礼して、部屋を出る。ルドルフは両手をあわせて、青年の働きに期待した。

***

「マックス!」
 ルドルフ軍のキャンプで、青年に声をかけたのはエルフィだ。
「聞いた。カリアス・トリーヴァを説得にいくって。危なくないの?」
「大丈夫さエルフィ。レイも来てくれる。龍王の息子は、負けたりしないよ」
 マックスは言うと、エルフィをじっと見て、それから勢い良く抱きしめた。
「エルフィ。言えなくなる前に言うよ。君のことが、ずっと好きだ。初めて見たときから」
「マックス・・・嬉しい。私も好き。マックス、この何ヶ月かで、凄くたくましくなった。私なんて置いてけぼりにされちゃうと思ってた」
「絶対に置いていかない。必ず帰ってくる」
「うん。ありがとう。待ってる」

 エルフィは大粒の涙を流した。マックスはエルフィの涙を拭いて、もう一度抱きしめた。ゼノン軍からレイが到着する。
「いってくるよ」
 マックスはエルフィに手を振り、龍と化したレイの背中に乗り、身体をしっかりと固定する。エルフィは涙声で、顔を伏せて、いってらっしゃいと呟いた。
「お別れは済んだのか、マックス」
「お別れじゃないさ。戻ってくる。お前だってその気だろう」
 レイはニヤリと口角をあげ、いくぞと唸った。マックスを乗せたレイは、クレイモア、ファルコンの軍が守備する土地を越え、デロメア・テクニカの首都デロメアに入った。数多の大砲が、レイに向かって発射される。航空機も、デロメアを守るために出撃した。

「レイ、気をつけろ。あの航空機ってやつは、思っているよりも速いぞ」
「言われなくても、油断などしない。俺は弱い。人間達は賢いし強い。だから生き残るために、必死で戦う」
「レイも変わったな」
 マックスを乗せたレイは、航空機の攻撃をかわし続け、カリアスの滞在する建物――デロメア中心部にそびえ立つエメラルドタワーへ突撃する。
「「うおおおおお!!」」



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《第3部マクシード・ライゼンハルト目次》
第1項 マクシード・ライゼンハルト
第2項 エンドラル・パルス
第3項 クラリス・レイヤー
第4項 エドガー・ラルティーン
第5項 将軍ルドルフ
第6項 復元者スヴィーナ
第7項 アトラス

第8項 エルフィ
第9項 ヴァルマサルサ
第10項 レイブン
第11項 人造の神
第12項 レイ
第13項 龍王プロメテウス
第14項 アルバ・ベータ
第15項 狂人達

第16項 グルジア侵攻
第17項 会談
第18項 停戦友好条約
第19項 72(セブンティツー)
第20項 1人の人間
第21項 決裂
第22項 プロフェッサーPO
第23項 エッジ
第24項 神の光

第25項 戦場の男女←いまここ
第26項 カリアス・トリーヴァ
第27項 儀式
第28項 邪神ディアボロス
第29項 還元者
第30項 光
第31項 セフィロス
エピローグ3

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