第22項 プロフェッサーPO

max

「スヴィーナを呼んでくれ。マタリカ大陸を戦場にしてしまった。俺のミスだ」
 ルドルフはグルジアの中心にある館で、側近にそう伝えた。
「酷い逃走戦だったな。この戦いは堪えた。しかししんがりのマックスという青年、やるじゃないか。見所がある」
 わずか8000人の生き残りの中に、マクシード・ライゼンハルトも含まれていた。塹壕のアイデアや、地下トンネルを使った脱出の提案、復元した神獣にクレイモアの制服を着せてダミーにするアイデアなど、奇策を実行し、ここまで逃げ延びたと聞いていた。

「少女のためになんとしても生き延びたいという、その意志が見て取れたな」
 ルドルフは、紙パックのグレープフルーツジュースを一気に飲み干した。
 そのルドルフ将軍に近づく老人が1人いた。館の守衛は眠らされていた。

「ルドルフ将軍、苦戦しておるようじゃな」
「あなたは?」
「わしはプロフェッサーPO。アイン・スタンスライン時代をこよなく愛する老人じゃ。火、もらうぞ」
 サングラスをかけた老人はルドルフの隣に座ると、葉巻に火をつけた。
「わしは人間だ。じゃが、カリアス・トリーヴァはいけ好かん。あの男は人間――凡人達に、『革新』の答えと手順を教えてしまう。科学者であるわしは、それをカンニングと呼んでいる」
「なるほど。天才科学者の頭脳に、ただの人間達が肉薄することが許せないと」
「そういうことじゃ。わしのつくった超兵器を君に貸してやろう。君も天才科学者と謳われた将軍じゃろう。君にわしの作品を見て欲しい」
「是非、お願い致します」

 ルドルフは、この天才科学者と次第に意気投合していった。ルドルフは最初『自己承認欲求の強いだけの老人か?』と考えていたが、プロフェッサーPOの持ってきた超兵器はルドルフを驚かせた。ヴァリアントと呼ばれた2ベルトのマシンは人工知能を持っているらしく、ルドルフやPOと話すことができた。
「ヴァリアントは体中に機関銃やガス兵器を搭載しておる。1体でファルコンの軍隊1つぐらいなら滅ぼせるぞ」

***

 クレイモアの軍勢は、一旦グルジアまで追いやられたが、プロフェッサーPOと協力した彼らはそこから持ちこたえた。2週間もすると、エレメンシア大陸からスヴィーナ将軍の部隊が到着し、ファルコンの勢力を押し返していた。さらにゼノン将軍の部隊が、デロメア・テクニカ最西部の港町アークラインに上陸を仕掛け、デロメア・テクニカの関所内も戦場となった。

 エドガーをかくまっているデロメア・テクニカのファルコン支部でも、戦争の波が迫っていることを察知していた。
「エドガー君。レイ君もだいぶ良くなってきたみたいだし、そろそろデモリューションに戻った方がいいわ。ここも戦場になる」
「なあ、アテねーちゃん。ファルコンはクレイモアと協調できねーのかな」
「それは、どうだろう。私は、復元者って怖いと思うわ。スピリットっていう小さな石ころさえあれば、人間が殺せるんだもの」

 パオラ・アテネはふさぎがちにそう答えた。エドガーは、彼女の中にある恐怖を感じることができた。『復元能力って、人間にとって恐怖なんだ』
 ファルコン支部で爆発が起きたのは、この数時間後だ。ゼノンの部隊がファルコン支部へ襲撃をかけていた。パオラは裏口にエドガーとレイを案内した。
「エドガー、レイ、いきなさい」
「アテねーちゃん!」
 エドガーは叫ぶ。しかしパオラは小さく微笑むと、裏口の扉を閉めた。
 彼女はこの数分後、爆発に巻き込まれた。
「なんでだよ、何でいい人ばっかり、先に死んでくんだよ」
 エドガーの呻きに、レイは何も声をかけることが出来なかった。

 ファルコンを出た2人は、巡り巡ってゼノンの部隊に発見され、若い兵士によって尋問された。クレイモアの制服を着ていたレイは簡単に信用されたが、”人間”であるエドガーは念入りに調べられ、極刑も考えられる状況だった。けれどもレイが『エドガーはデモリューションという組織の一員で、ファルコンの調査をしていただけだ』と説明したことで、エドガーは許され、デモリューションに引き渡されることが決まった。レイはそのままゼノンの部隊に組み込まれた。レイも少しずつ、変わり始めているようだった。

 戦場は次第に凄惨さを増していった。マックスもルドルフと共に幾多の戦線へ参加し、死の恐怖と戦いながらも、生き延びていく。




《第3部マクシード・ライゼンハルト目次》
第1項 マクシード・ライゼンハルト
第2項 エンドラル・パルス
第3項 クラリス・レイヤー
第4項 エドガー・ラルティーン
第5項 将軍ルドルフ
第6項 復元者スヴィーナ
第7項 アトラス

第8項 エルフィ
第9項 ヴァルマサルサ
第10項 レイブン
第11項 人造の神
第12項 レイ
第13項 龍王プロメテウス
第14項 アルバ・ベータ
第15項 狂人達

第16項 グルジア侵攻
第17項 会談
第18項 停戦友好条約
第19項 72(セブンティツー)
第20項 1人の人間
第21項 決裂
第22項 プロフェッサーPO←いまここ
第23項 エッジ
第24項 神の光

第25項 戦場の男女
第26項 カリアス・トリーヴァ
第27項 儀式
第28項 邪神ディアボロス
第29項 還元者
第30項 光
第31項 セフィロス
エピローグ3

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