第18項 停戦友好条約

max

「面白い考え方だ。だが、やってみなければわからないよ」
 ルドルフには、この若者の批判を受け入れるだけの器量があった。ルドルフはあくまでもファルコンとの交渉――停戦友好条約を結ぶ交渉へ望む覚悟だ。

 そして1週間後、クレイモアの代表ルドルフと、ファルコンの代表クライアントの、交渉の場が設けられた。デロメア・テクニカとメルッショルドの国境にかかる橋の上だ。両軍は橋の両端にそれぞれ集い、交渉の行方を見守った。ルドルフは縄でしばったカミュ将軍を強引に引き連れながら、橋の上をずかずかと歩いていく。マックス、エルフィ、レイはクレイモア側の最前列で、ルドルフの交渉を見る権利が与えられた。

「私はクレイモアのルドルフだ。カミュ将軍を返すぞ。そして、貴公らと停戦友好条約を結びたい」
 白い手袋をした手を空へと伸ばしながら、ルドルフはニヤリと笑う。それをファルコン側の岸辺――木と岩の影から見ていたのはアーサーだ。

「はぁじまぁるよー」
「アーサー、すり替えは済んだのか?」
 アルバ・ベータの言葉にアーサーは、掌ほどの大きさの歯車をちらつかせた。
「フィーちゃんがやって、くれましたー。あと30秒で、爆弾がボンッ! ルドルフ将軍がいなくなったら、戦争はまだまだ、続くぞー」
「ぞくぞくするな。ルドルフ将軍よー。簡単に停戦なんてさせないぜ」
 2人は、手元のカウンターに目をやった。数字が1ずつ減っていく。
 違和感に気づいたのはエルフィだ。
「ねぇマックス。あの歯車少しおかしくないかな。何か、音がする気がするの」
「そうか? 俺には、昨日見た歯車と同じに見えるけど」
 エルフィは目を凝らして、ルドルフの握る歯車を見、それに精神を集中させた。内部構造が、僅かに透けて見えたような気がした。
「何か仕掛けられてる!」
 叫ぶと同時に、エルフィは走り出した。マックスもそれを追う。エルフィは、ルドルフから歯車を盗み取ると、両軍に橋の両端まで走るよう叫んだ。彼女は歯車をお腹に抱えるようにして、その場へうずくまった。

 あたりに喧噪が走る。とっさのことで、避難が迅速には行なわれなかった。アーサーとアルバがカウンターを見ながら数字を言う。
「「おおお、3、2、1、いくぞー!! ・・・あれ?」」
 エルフィがお腹に抱えた爆弾は、爆発しなかった。
「うそだー、不発!? 将軍の首が飛ぶのを見たかったのに」
 アーサーは頭を抱えた。
「じゃあ、これでやりましょうかね。アーサー、逃げる準備しとけ。場所バレるからな」
 アルバ・ベータは大型のスナイパーライフルを取り出し、ルドルフの胸元へ照準を合わせる。
「さよならルドルフ将軍。あんたがいないと、クレイモアは狂うだろうね」
 アルバ・ベータは引き金を引いた。弾丸がルドルフの心臓へ向けて放たれる。だが、弾丸が貫いたのはルドルフの心臓ではなく、カミュの心臓だった。カミュがアルバ・ベータの行為にいち早く気づき、ルドルフを庇ったのだった。
「カミュ将軍。何故俺を庇った」
「貴公には命を救われた恩がある。それに、この弾丸はファルコン側から放たれた弾丸だ。だとしたら、クレイモアの人間が傷ついては、いけない・・・」

 弾丸には毒も付与されていたらしく、カミュ将軍の鼓動はあっという間に小さくなり、途絶えた。クレイモア側からは、ルドルフを狙った凶弾が、誤ってカミュを殺したとの声が上がり、ファルコン側には停戦の意志がないと声高に叫ばれるようになった。
「こうなってしまうのか」
 ルドルフは頭を振った。友好条約締結への道は、遠のいた。
「全軍、一旦退却! ファルコンよ、カミュ将軍はそちら側から放たれた凶弾によって倒れた。私を狙ったものだ。3日待つ。貴公らの釈明を期待する」

 クレイモアとファルコンは、互いに緊迫した状態で軍を退けた。
 マックスも、橋の真ん中に倒れていたエルフィを連れて移動していく。
「エルフィ、凄い熱だ。大丈夫か?」
「マックス。なんだか頭がぼうっとする。私、少し怖い」
 夜、エルフィの抱いていた歯車に爆弾が仕掛けられていたこと、そして爆弾は起動していたことがわかった。しかし爆薬が単なる砂と化しており、それで爆発を逃れた。そう、エルフィは爆薬を砂へ変えた――。 



《第3部マクシード・ライゼンハルト目次》
第1項 マクシード・ライゼンハルト
第2項 エンドラル・パルス
第3項 クラリス・レイヤー
第4項 エドガー・ラルティーン
第5項 将軍ルドルフ
第6項 復元者スヴィーナ
第7項 アトラス

第8項 エルフィ
第9項 ヴァルマサルサ
第10項 レイブン
第11項 人造の神
第12項 レイ
第13項 龍王プロメテウス
第14項 アルバ・ベータ
第15項 狂人達

第16項 グルジア侵攻
第17項 会談
第18項 停戦友好条約←いまここ
第19項 72(セブンティツー)
第20項 1人の人間
第21項 決裂
第22項 プロフェッサーPO
第23項 エッジ
第24項 神の光

第25項 戦場の男女
第26項 カリアス・トリーヴァ
第27項 儀式
第28項 邪神ディアボロス
第29項 還元者
第30項 光
第31項 セフィロス
エピローグ3

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

ピックアップ記事

  1. 59736578-19f0-4460-a22b-36c70aa80895
    プロのイラストレーターの挿絵であなたの作品を一層魅力的にします! プロのシナリオライターがあな…
  2. アイン2
    こんにちは。 橋本橙佳です。 このエントリでは橋本橙佳が様々なクリエイタ…
  3. gaiden1
    これは、秘匿とされた物語。 &nb…

Twitter でフォロー

ページ上部へ戻る
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。