第14項 アルバ・ベータ

max

 マックスとエルフィは、龍王プロメテウスの城で、ドラゴンサイズのベッドに横になり、小人になったような気分を感じながら、身体を休めた。
 翌日、龍王に礼を伝えて、彼らは旅に出ることを宣言する。行き先はマタリカ大陸。まだ戦争の始まっていないこの大陸で、マックスはエルフィにヒトの世界を見せたいと思ったのだった。

 龍王プロメテウスもそれを歓迎した。と同時に、レイを一緒に同行させてもらえないかとマックスに頼み込んだ。マックスはもちろんエルフィとの旅行を楽しむ気だったから、乗り気でなかったが、プロメテウスに世話になったことや、自分がレイから学べる部分がきっとあると思い、彼の同行を許容した。

 かくしてマックス、エルフィにレイを加えた一行は、マタリカ大陸の最南端の国、かつての貿易大国メルッショルドへ上陸していく。

***

 マタリカ大陸。この大陸は、”人間”がひとかどの平和を享受できる希有な場所だった。
 カリアス・トリーヴァと軍事組織ファルコンの統治によって、元デロメア・テクニカを中心に”人間”たちが保護されている。”人間”たちはアイン・スタンスラインの時代のように商売や農作業に励み、お金や食べ物を生み出すことができた。
 エレメンシア大陸で復元者が富み、人間が虐げられているように、マタリカ大陸では人間が富み、復元者が虐げられていた。
 人間による独占的統治――マタリカ大陸を表現するとしたらそんな言葉がふさわしい。

 けれども、そんな”人間”の平定した生活をよく思わない人々もいた。
 それは、ファルコンによって、虐げられ抑圧されていた復元者の中から出てきたわけではない。
 プリズン――と呼ばれる”人間”の集団だ。彼らはアルバ・ベータと名乗る、髪を赤く染め、赤い眼鏡をした”人間”を中心に活動するグループだった。一言で言えば、彼らは狂っていた。アルバたちはエレメンシア大陸のオルヴェンスワン、クレイモアと神の軍勢がまさに戦争をしている渦中に飛び込み、神の軍勢を”捕獲”する。そして”捕獲”した神の軍勢の脳みそを取り除いてチップを埋め込み、リモコンで自分たちの思い通りに操作できる傀儡へ改造していく。

 狂っているのは、彼らがこの傀儡を動かす場所だった。彼らはきまってマタリカ大陸、それも軍事組織ファルコンの統治下で、この傀儡を活動させた。神の軍勢は、復元者がスピリットから復元した獣に見えるため、人間たちは次第に、復元者がマタリカ大陸で人間を襲撃していると噂し始めた。

 また、中には神の軍勢がエレメンシア大陸を征服し、マタリカ大陸に勢力を拡大してきたのだと考えるものもいた。そういった人々は、エレメンシア大陸からマタリカ大陸に上陸しようとするヒトを不審がり、果てには船を沈めたりした。

***

 こうして人間たちの間で、徐々に不穏な空気が流れ始めた頃、軍事組織ファルコンの上層部では強硬派と保守派の対立が強まっていた。

 ファルコンによる治安維持活動が機能している元デロメア・テクニカ周辺では、情報統制や警備強化によって混乱が収束しつつあったが、ファルコンの管理外である他の地域では少しずつ暴動が広がっていた。
 ファルコンを指揮するフォルス提督は、これを機にアルテリアやロマリアの復元者も滅ぼして管理区域を広げる必要がある、と主張し、保守的な幹部との確執を生んでいた。ファルコンの創設時から、フォルス提督を支えてきたクライアント・ディスローズも保守的な立場の人間だった。

「まだ、復元者による攻撃と決まったわけじゃない。提督、早まってはダメだ」
「それはわかっている、クライアント。しかし私はこれをチャンスととらえた。今マタリカで起きている異変が、復元者の仕業でなくとも、アルテリアやロマリアへ攻め込むための大義になる」
 フォルスはマタリカ大陸東の土地へ、軍を出兵させる理由を求めていた。そしてファルコンはアルテリアの平定へ乗り出す。アルテリアとデロメア・テクニカの間に存在するストライトを滅ぼすというのも、彼らの願いだった。
 ファルコンがアルテリアの復元者に向けて宣戦布告をし、ストライトの地で初めての戦闘を行なったとき、その様子を望遠鏡で確認している人影がいた。

「ひゃっはー。始まったみたいだぜ、リーダー」
 冷えたスンドゥブをかき込みながら、アーサー・ラーレンティアは言った。
「すっげー爆発。やっぱり最新兵器は違うなー。ん?ありゃ新型の銃か。爆弾を遠くまで飛ばすことができるみたいだな」
 アーサーはグレネードランチャーと呼ばれるそれを見て感動していた。
「アーサー、やはり戦争はいいな。人間の英知が見てとれる。ついにここまで殺傷力のある兵器が出てきたんだな」
 アルバ・ベータも戦争を見て興奮していた。
「そして素晴らしいのは、この戦争を、俺達が起こしたという事実だ。アーサー、人間は、少人数で歴史を変えることができるんだ。ハハハハハハ」

 プリズン――彼らは、エスカレートするヒト同士の戦いが楽しくて仕方のない狂人たち。彼らは皆、人間の限界を超えていた、理性という限界を。




《第3部マクシード・ライゼンハルト目次》
第1項 マクシード・ライゼンハルト
第2項 エンドラル・パルス
第3項 クラリス・レイヤー
第4項 エドガー・ラルティーン
第5項 将軍ルドルフ
第6項 復元者スヴィーナ
第7項 アトラス

第8項 エルフィ
第9項 ヴァルマサルサ
第10項 レイブン
第11項 人造の神
第12項 レイ
第13項 龍王プロメテウス
第14項 アルバ・ベータ←いまここ
第15項 狂人達

第16項 グルジア侵攻
第17項 会談
第18項 停戦友好条約
第19項 72(セブンティツー)
第20項 1人の人間
第21項 決裂
第22項 プロフェッサーPO
第23項 エッジ
第24項 神の光

第25項 戦場の男女
第26項 カリアス・トリーヴァ
第27項 儀式
第28項 邪神ディアボロス
第29項 還元者
第30項 光
第31項 セフィロス
エピローグ3

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