第13項 龍王プロメテウス

max

「結局、俺達の力が無いと事態は解決できなかったな」
 レイは誇らしげに胸を張った。
「何言ってんだ。俺達の部隊が持ちこたえたからこそだろうが」
 ライドは悪態をついたが、レイは鼻で笑ってまともに相手をしなかった。

「そういえば、親父にあわせたい人間がいるって聞いて、迎えを頼まれた」
「それは彼だ。マクシード・ライゼンハルト。マックス君と言う」
 ヴァルマサルサはマックスをレイに紹介した。レイはいぶかしげにマックスを見ると、地面につばを吐いた。
「失礼。ヒトを見ると気分が悪くなる身体なんだ。エルフィ、お前がこいつを城まで案内しろ。俺は5匹の龍を先導して先に帰っている」
 龍王の息子レイ。人型へモーションチェンジした際の見た目は、マックスと同い年程度に見えるが、30歳を越えている。それでも平均して1500歳は生きる龍の一族の中では、生まれたての子鹿も同然だった。

「ごめんね、マックス。レイっていつもああなの」
「いや、精霊にヒトが歓迎されているとは思っていなかったから、大丈夫だよ。むしろヴァルマサルサ、あなたには本当にお世話になりました。ありがとうございました」
「気にするな、少年。これからもエルフィを頼むぞ」
 エルフィはエシュロンを呼び出すと、マックスを後ろに乗せて飛び立った。レイを含む6匹の龍の飛行速度は速く、2人との距離はどんどん遠ざかっていく。エルフィが『少しぐらい待ってくれてもいいのになあ』と思った頃、6匹の中の1匹が、エシュロンにあわせて飛行速度を落としてくれた。

『王子は気が立っているようだ。気を悪くしないでくれ。龍の一族は若い頃は気性が荒い。彼はまだまだこれからだ』
 黒い鱗が、太陽の光を浴びて黒曜石のように光っていた。龍王の一番の家臣ティアマットだった。龍の一団とエシュロンは、ラスタラスラの東の端、ラクシュミ―山の山頂付近に築かれた宮殿へと入っていった。ヴァルマサルサの城よりも、あらゆるものが大きい。天井は8ベルトも上にあったし、扉は7ベルトほども大きさがある。レイが先導して城をくぐり、凱旋門のような廊下を歩き、美しい金細工の巨大な扉を開くとそこに龍王プロメテウスが龍の姿で座していた。体長は、5ベルトもあるだろうか。赤い鱗をもつ、とても美しい龍だ。

『よく来たな。マクシード・ライゼンハルト』
 龍は、ヴァルマサルサからの紹介状を手に携えていた。
『龍の一族は君を歓迎するよ。幾多の戦場を駆けてきたと伺っている。私もその話を、是非聞きたいと考えているのだ』
「父上!」レイが叫んだ。
「人間に聞くことなど、何もないでしょう。つまらない暇つぶしは止めて、こんな島から出るべきです。大陸の覇者が俺達だと、人間に思い知らせるべきです。我々は選ばれし、龍の一族ではないですか」
『レイ。お前はまだ自分の小ささがわかっていないようだな』
 プロメテウスは念力を使い、レイを天井へ叩き付けた。レイは10ベルトの高さから受け身もとれずに落下して、そのまま伸びてしまった。
『失礼をした。レイはまだ子どもなのだ。自ら戦争を望むなど、精霊の恥だ』
 プロメテウスは念力で、マックスとエルフィの座れる位置へ椅子を動かした。
『マクシード君。私はね、若い頃の猛々しい気持ちなど、もはやひとかけらも残っていない。あとは自然の中で余生を過ごすことが出来ればいいと、そんなことばかり考えている。ゆえに今、世界で起きている戦争の原因が分からない。何故戦争は起きるのだろう』
「憎悪の連鎖。人々は家族や仲間を殺された恨みを許すことが出来ないから、相手を滅ぼすまで、戦うのだと思います」
 マックスはレバノンでクラリスが言っていた言葉を思い出しながら話した。

『憎しみの連鎖か。じゃあマクシード君。はじまりはどこにあるのだろうか。例えば君が、私に対して少しは抱いているであろう、巨大なものへの恐怖か? それとも、自分と同じものに対する嫌悪感か?』
 プロメテウスは念力で、マックスの目の前にマックスと瓜二つのヒトを映してみせた。マックスはそれに仰天し、言いようのない不安を抱いた。
『それとも、相手の本心が読めないことへの、疑心か? 疑心からの恐怖、そして保身だろうか。だとすれば個体同士での戦争は運命ならざるを得ない』

 プロメテウスの言葉に、マックスは再び思考を始めた。この日の夜、マックスは龍王の城でなかなか寝つけなかった。
 プロメテウスは星空を見上げ、想う。
『しかしレイのように好戦的な考えが、若者の中で流行り始めている。何故だ』 



《第3部マクシード・ライゼンハルト目次》
第1項 マクシード・ライゼンハルト
第2項 エンドラル・パルス
第3項 クラリス・レイヤー
第4項 エドガー・ラルティーン
第5項 将軍ルドルフ
第6項 復元者スヴィーナ
第7項 アトラス

第8項 エルフィ
第9項 ヴァルマサルサ
第10項 レイブン
第11項 人造の神
第12項 レイ
第13項 龍王プロメテウス←いまここ
第14項 アルバ・ベータ
第15項 狂人達

第16項 グルジア侵攻
第17項 会談
第18項 停戦友好条約
第19項 72(セブンティツー)
第20項 1人の人間
第21項 決裂
第22項 プロフェッサーPO
第23項 エッジ
第24項 神の光

第25項 戦場の男女
第26項 カリアス・トリーヴァ
第27項 儀式
第28項 邪神ディアボロス
第29項 還元者
第30項 光
第31項 セフィロス
エピローグ3

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