第12項 レイ

max

 ヴァルマサルサは、壁に設置された計器群、その中心部に取り付けられたレバーを降ろした。カプセルを満たしていた培養液がゴボゴボと音を挙げてこぼれていく。
「これで我々の実験も終わりだ。アドヴァーグ・ドースティンといったか。君の目的もこれで達成されたかな」
「まだだ」
 アドヴァーグはカプセルの中の培養液が全て抜けたのを確認すると、カプセルを破壊し、そのなかに存在する人造の神、この身体を裁断した。

「これで2度と蘇らせることはできないだろう。それから」
 アドヴァーグはヴァルマサルサへ詰め寄った。
「協力者の名前を全て挙げろ。この装置も、お前1人で造ったわけではあるまい。精霊にそんな技術力は無い」
「甘く見られたものだ。少年よ。わしは1200年以上生きている。普通の人間よりは多少は賢いさ」
 ヴァルマサルサは計器群を愛でるような目で見て、それから言った。

「とはいえ、君の言う通り、協力者はいた。その協力者の名はリチャード・カッパーフィールド。天才科学者の人間だったが、今は単なるおもちゃ屋だ。オースリベラリア出身なら、彼の作ったゲームで遊んだ事があるんじゃないか?」
「あ、もしかしてギャザリングですか」
 オースリベラリア出身のマックスは、幼い頃に友人と遊んだカードゲームの名前を発言した。
「そんな名前じゃったかな。どえらく儲けとるらしいが。ちなみに彼は、人造の神に魂が宿らないことを確認すると、すぐ消えていったよ。その後のことはワシの単独犯だ。エルフィについては関与していない」
「バカな! 人間が人造の神の創造に手を貸すなど、信じられん」
「アドヴァーグよ、哀しいがそれが人間の性なのだ。特に天才科学者は、一般人の枠を超えてしまうことがある」
「限界を越えた力・・・昔エンドラルさんが発現したXceedのような」
「リチャードはあのとき、超えていたかもしれんな。その先で見た景色が、今の彼を遊びの世界へと誘ったのかもしれん。さあアドヴァーグ。これで脅威は去ったな」

 3人は再び、アドヴァ―グの先導のもとエレベータへ乗った。長い沈黙が続く。アドヴァーグは、『エリカの犠牲は何だったのか』と自問自答していた。そしてエレベータが地上へ到着したとき、アドヴァーグは目を見張った。彼の連れてきた20人余りの兵士達が、敵に拘束されていたのだ。
「バカな。ファルコンの暗躍部隊だぞ」
「「俺達が間に合ったのさ」」
 その声は空から聞こえてきた。城の天井に空いた大きな窓に、人が立っていた。そのヒトは窓を飛び降りると――龍の姿へとその身体を変化させた。
「あれはプロメテウスの軍だな。彼は龍王の息子レイか」
 ヴァルマサルサは手で日差しを遮りながら、現況把握に務めた。
「エルフィが呼んできてくれたのか」
「お父様!」
 エルフィは1匹の龍の背に乗り、ヴァルマサルサの側まで近づくと、父親の元に走りより、2.5ベルトの巨体へ向けてジャンプして抱きついた。
「間に合ってよかった」
 ヴァルマサルサは本当に幸せそうに娘の頭をなでながら、マックスを見やり、先ほどの見たことをしゃべらないよう、口の前に指を一本立てた。

 戦場には6匹の龍が飛びまわっていた。空からのブレス攻撃、強力なかぎ爪攻撃、互いの連携と人型へのモーションチェンジを巧みに操り、レイブンに主導権を握らせなかった。さらに精錬団のライドやハテプも加わり、戦いは一方的な展開を見せていた。アドヴァーグも、ライドとハテプ、龍王の息子レイに囲まれて、少しずつかすり傷を受けていく。彼に致命傷を与えたのはレイだ。死角より近づき、彼の左肩から右脇腹まで続く長大な傷を負わせた。もんどりうって倒れたアドヴァーグをライドとハテプが抑え、戦闘は終結した。
 レイはアドヴァーグの両手の親指を切り落とし、包帯を巻いて治療する。
「これでもう、剣は握れない。ラスタラスラにはもう来るな、人間」

 レイはアドヴァーグと20人の兵士達を、彼らが侵入した時に使ったと思われる船に押し込んだ。ヴァルマサルサが最後に、アドヴァーグに諭す。
「アドヴァーグ、君の目的は達成できただろう。静かに休め。時代は若者が切り開いてくれる」 



《第3部マクシード・ライゼンハルト目次》
第1項 マクシード・ライゼンハルト
第2項 エンドラル・パルス
第3項 クラリス・レイヤー
第4項 エドガー・ラルティーン
第5項 将軍ルドルフ
第6項 復元者スヴィーナ
第7項 アトラス

第8項 エルフィ
第9項 ヴァルマサルサ
第10項 レイブン
第11項 人造の神
第12項 レイ←いまここ
第13項 龍王プロメテウス
第14項 アルバ・ベータ
第15項 狂人達

第16項 グルジア侵攻
第17項 会談
第18項 停戦友好条約
第19項 72(セブンティツー)
第20項 1人の人間
第21項 決裂
第22項 プロフェッサーPO
第23項 エッジ
第24項 神の光

第25項 戦場の男女
第26項 カリアス・トリーヴァ
第27項 儀式
第28項 邪神ディアボロス
第29項 還元者
第30項 光
第31項 セフィロス
エピローグ3

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