第11項 人造の神

max

 城の中に1人潜入したアドヴァーグは、ヴァルマサルサとマックスのいる部屋まで到達していた。ヴァルマサルサはいつの間にか身に付けていたマントを翻し、アドヴァーグの到着を歓迎した。

「たった1人でよく来たな。兵力はあまり多くないようだが、大丈夫かな? わしの組織する精霊団は、存外強いぞ」
「問題ないさ。貴公さえ抑えればいいのだからな」
 アドヴァーグは剣を抜いた。その前に立ちはだかったのはマックスだ。
「マクシード・ライゼンハルト、参る!」
 マックスはアドヴァーグに切り掛かった。しかし青年の剣はまだ若かった。アドヴァーグはマックスの剣線を簡単にいなすと、柄でマックスの右胸を突いた。青年はゴホゴホと咳き込み、一旦退く。再度切り掛かるが、その攻撃もアドヴァーグは簡単にかわした。マックスは次第に恐怖を抱き始めていた。アドヴァーグに剣が当たる気がしなかった。ヒト同士の剣の振り合いに、これほどまでの差が出るとは、信じられなかった。

「すまん、精霊王。勝ち目が見えない。あなたの能力で、どうにかならないか」
「やってみよう」
 ヴァルマサルサは瞳を閉じ、念力を使って、アドヴァーグの精神に干渉しようとする。しかしアドヴァーグは、ヴァルマサルサの攻撃をジェリス イン デイブレイク――精霊シュワンの目玉の力で防いだ。
「うん」
 ヴァルマサルサは目を開いた。
「こりゃダメじゃな」
 精霊王は、旧時代のアインシュタインの有名な写真のようにベロを出した。

 アドヴァーグは腰から小刀を取り出し、ヴァルマサルサの喉元へ突きつけると、地下室にある”それ”を見せるよう命じた。精霊王は観念したように、部屋の奥に隠されたエレベータへ、アドヴァーグとマックスを誘った。

「マックス君。君にも見てもらっておいた方がいいだろう。彼女の秘密を」
「彼女の秘密?」
「そうだ」アドヴァーグが口を挟む。
「我々がここに来た目的は、ラスタラスラで行なわれている実験だ。精霊王ヴァルマサルサ、龍王プロメテウスを調査していた我々は、この不可侵条約を結び、ヒトが立ち入ることを許されていない土地で、精霊たちがヒトを葬るための実験を行なっていたことを突き止めたのだ」
 その言葉にマックスは目を見開く。ヴァルマサルサは無言を貫いた。
「マクシード、と言ったな。オルヴェンスワンの地に神が降臨していることは知っているだろう。この神は神の軍勢と呼ばれる獣を生み出し、ヒトを虐殺している。我々はこの神について調べた。この世界には、2000年前8体の神が降臨した。そして人間と争い、文明は滅びたという。我々は僅かに生き残った人間の生き残りなのだ」

 アドヴァーグは2000年前の人々の悲哀を感じているようだった。マックスは問う。
「なぜ、そんな話を」
「決まっている。精霊王ヴァルマサルサは、その8体の神の中の1体を、蘇らせようとしたのだ。いわば人造の神の創造。精霊達は、ヒトを滅ぼそうとしている」
「そんな! ヴァルマサルサ! 嘘だと言ってくれ!」
 ヴァルマサルサは何も答えなかった。エレベータが停止する。最下層まで降り立ったようだ。エレベータの扉が開く。そこには、巨大な、緑色の液体の満たされたカプセルの中で漂っている、”ヒト”型の生き物が存在していた。
「マックスよ。その男の言うことは半分正しい。わしは確かに人造の神の創造を嗜好した。そしてラスタラスラの古代遺跡から、2000年前に降臨した神の中の1体、その身体を発見できたのだ。小柄な女性のミイラだ。それを復活させた我々は、その男の言うように、ヒトの滅亡をわずかに望んでいたのかもしれない。しかし」

 ヴァルマサルサは哀しげに目を閉じた。
「その身体に魂は宿らなかった。人造の神は、単なる箱でしかなかったのだ。それでも彼女は、歩くことができたし、女性としての機能も持っていた」
「女性って・・・まさか!」
「そうだ。マックス君。エルフィは、我々の実験の結果、神と精霊の間に生まれた娘なのだ。わしの愚かさを、罪を罰するならば罰してくれ。だが娘に罪は無い。せめて彼女には、幸せになって欲しいのだ」



《第3部マクシード・ライゼンハルト目次》
第1項 マクシード・ライゼンハルト
第2項 エンドラル・パルス
第3項 クラリス・レイヤー
第4項 エドガー・ラルティーン
第5項 将軍ルドルフ
第6項 復元者スヴィーナ
第7項 アトラス

第8項 エルフィ
第9項 ヴァルマサルサ
第10項 レイブン
第11項 人造の神←いまここ
第12項 レイ
第13項 龍王プロメテウス
第14項 アルバ・ベータ
第15項 狂人達

第16項 グルジア侵攻
第17項 会談
第18項 停戦友好条約
第19項 72(セブンティツー)
第20項 1人の人間
第21項 決裂
第22項 プロフェッサーPO
第23項 エッジ
第24項 神の光

第25項 戦場の男女
第26項 カリアス・トリーヴァ
第27項 儀式
第28項 邪神ディアボロス
第29項 還元者
第30項 光
第31項 セフィロス
エピローグ3

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