第9項 ヴァルマサルサ

max

 エレメンシア大陸の南、ユーグリット大陸の西側に浮かぶ島ラスタラスラは、かつてよりヒト――人間と復元者の上陸が厳しく制限されている土地だった。もともとユーグリット大陸やマタリカ大陸には、多くの精霊が棲んでいた。当初ヒトと精霊は、共に手を取り合って過ごしていたが、次第に力をつけ始めたヒトは、銃や爆弾を使って、現住民族である精霊から大陸を奪い取った。精霊達は強大な力を持っていたが、ヒトに反抗をしようとはしなかった。

 彼らは哀しみを受け入れて、ヒトを許したのだった。
 そしてこのラスタラスラへと移住した。周囲の海流も激しく、島には森と山が広がっている。猛獣も多く、ヒトが住むにはあまりにメリットの小さな土地だった。それもあってこの大地は精霊のものとされ、ヒトと精霊の間で不可侵条約が結ばれた。
「もう着くよ、ラスタラスラの中心部、ヘラクレイオン」
 マックスとエルフィは、3時間ほどかけてヴィヴァリンからこの南の島へと辿り着いた。そこには山を切り抜いて造られた城が存在していた。
「これはすごいな」
「マックス、お父様に紹介するから、来て。こっち」
 マックスはエルフィに手をひかれるようにして、城の中へと入っていった。
「待ちな。なんだその不振な野郎は」

 城の門に立っていたのは、全身茶色の物体――巨大なハンバーガーみたいなものの頭に、緑の宝石がついている生き物だった。身長は1ベルトくらいだろうか。龍の紋章が刻まれた剣を携えている。
「ライド、大丈夫。私の友達よ」
「エルフィの? お前、姫に何かしたら承知しないぞ」
 茶色の物体は、あまり表情の見えない目で――この物体は黒目しかない――マックスを見やり、城への入場を許可した。

 城の中は、外から見るよりもずっと広く、立派な造りになっていた。廊下には赤い絨毯が敷かれており、その絨毯の上をエルフィとマックスは走り、辿り着いた先にそびえる巨大な扉を開けた。
「ようこそ、ラスタラスラへ。わしはこの地を納める3人の精霊王の1人、ヴァルマサルサだ」
 緑色の髪をした、ひげ面の大男がそこに座っていた。
「お父様」
「この方がエルフィの父親? ・・・似てないな」
「はっは。精霊に身体などあってないようなものだ」
 2.5ベルトはある巨体が立ち上がり、マックスの側へ歩み寄る。
「いい面構えをしている。ヒトならば、エルフィと同い年くらいか」
「さすがの洞察力です。今年で17になりました、マクシード・ライゼンハルトと申します。マックスと御呼びください」
「そう固くなるな。エルフィは同い年の友人が少ない。わしとはそうだな、1200歳は違うから、話が合うはずもない。仲良くしてやってくれ」
 ヴァルマサルサはガハハと笑うと、マックスとエルフィの肩を叩いた。
「マックス君はしばらくここにいられるのかね。人の住む都会とは違って不便だが、なんならこの城でしばらく泊まっていくといい」
「ありがとうございます。私のいた所の方が、ずっと不便で、気が落ち着きませんでした」
「そうか。君は若いのに戦士だったのだな。そうだ、龍王プロメテウスにも会うといい。紹介状を書いてやろう。だが今日はここへ泊まっていけよ」

 ヴァルマサルサとマックスは、ラスタラスラに伝わる酒を酌み交わした。柑橘系の果物から鋳造した酒だという。酔っぱらったヴァルマサルサは、エルフィがどれだけ可愛いかを延々と話した。エルフィはヴァルマサルサを何度も小突き、恥ずかしいからやめてと懇願したが、1200歳を超えたおっちゃんは少女の静止程度では全然止まらない。酔いつぶれて寝いびきをたてるまで、ヴァルマサルサは話し続けた。その頃にはマックスとエルフィもすやすやと眠りに落ちた。

 ラスタラスラへの侵入者が、船で島へ上陸したのはその頃だった。深夜の島はフクロウと虫の鳴き声以外、物音はない。そこへガサガサと草をかき分けるヒトの音。
「へんなもんが流れ着きやがったな」
 精霊王の城を守るライドは、その気配に気づいていた。
 ラスタラスラに上陸したのはアドヴァーグ・ドースティンと、武装した30名の兵士達だった。



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《第3部マクシード・ライゼンハルト目次》
第1項 マクシード・ライゼンハルト
第2項 エンドラル・パルス
第3項 クラリス・レイヤー
第4項 エドガー・ラルティーン
第5項 将軍ルドルフ
第6項 復元者スヴィーナ
第7項 アトラス

第8項 エルフィ
第9項 ヴァルマサルサ←いまここ
第10項 レイブン
第11項 人造の神
第12項 レイ
第13項 龍王プロメテウス
第14項 アルバ・ベータ
第15項 狂人達

第16項 グルジア侵攻
第17項 会談
第18項 停戦友好条約
第19項 72(セブンティツー)
第20項 1人の人間
第21項 決裂
第22項 プロフェッサーPO
第23項 エッジ
第24項 神の光

第25項 戦場の男女
第26項 カリアス・トリーヴァ
第27項 儀式
第28項 邪神ディアボロス
第29項 還元者
第30項 光
第31項 セフィロス
エピローグ3

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