第4項 エドガー・ラルティーン

max

 レバノンに配属されたマックスは、アトラス直属の部隊で、レバノンのパトロールを任せられた。それはレバノンの地理を理解するための仕事であり、後にレバノン戦線で最前線に携わるための準備だった。彼は、レバノンに戦傷者が溢れていることを見て取った。助けようにも、敵方からのテロや狙撃が発生する可能性があるから、誰も手をかさない。

 マックスの目の前でも、人間が1人血を流して倒れていた。右足を爆弾に吹き飛ばされたらしく、1人で動けないようだ。マックスはその現実から目を背けたが、彼の隣を人影が通った。緑色の髪をした青年だった。
「何やってんだ? ここは危ないぜ。さ、とっとと行こう!」
 青年は人間を背負うと、マックスを誘って走り出した。
「俺はエドガー・ラルティーン。エドガーで良いよ。よろしくな」
 緑髪の青年はにっこり笑った。聞けばマックスと同じ17歳だと言う。エドガーは、マックス共々レバノン郊外に止められていた大型バスに乗り込んだ。

『デモリューション』

 復元者、人間を問わず、戦傷者を助けていく集団だ。この集団を率いるヴァリアスという女性は、元々はクレイモアの1部隊を率いていた。けれどヴァリアスは戦争地帯で戦後の有様を見て、戦よりもその後の復旧を大事にしたいと考えるようになった。デモリューションに集まっているメンバは、ヴァリアスが戦場で助けた人々も多く含まれている。エドガー・ラルティーンもその1人だ。彼はマックスを大型バスの一角にある部屋へ招待した。

「ここが俺の部屋。ちょーきたねぇけど我慢してくれよな。そだ、コーヒーでも飲むか?」
 エドガーの部屋は物で溢れていた。書物、筆記用具、地図、フラスコに望遠鏡。彼はフラスコでコーヒーを湧かすと、それをコップに入れてマックスに手渡した。
「なぜ、復元者が人間を助けるんだ?」
「ん? ああ、俺復元者じゃねーよ、人間さ。でもこの船のリーダーは復元者。おかしなところだろ?」
 エドガーはまた笑った。マックスは一瞬警戒したが、エドガーの笑顔で警戒は一気に緩んだ。
「緑色の髪だから、よく復元者に間違われるんだよな。まあ、自分で染めたんだけど。人とは違うことがしたくってさ。髪の色変えるだけで人種変われるって、この世界って、なんて簡単なんでしょ」
 エドガーはけらけら笑った。マックスもつられて笑った。
「俺も茶髪だったから、人間と間違えられたことが何度かあったよ」
「やっぱり。人を見た目で判断するなって話だよな。お前名前なんて言うんだ?」
「俺はマクシード・ライゼンハルト。マックスでいい。最近、17歳になった」
「同い年じゃねーか! テンション上がるなあー」
 同い年だったから2人は気兼ねなく話ができた。エドガーはマックスを気に入って、こう持ちかけた。
「うちのリーダー、俺はヴァリ姉って呼んでるんだけど、顔が広くてさ。今度クラリス・レイヤーと会談するらしい。クレイモアとの決戦を回避するための、根回しだろうな。なあマックス。潜り込んでみないか」

 マックスはエドガーのこの悪巧みに乗った。といってもエドガーはヴァリアスに直訴しにいっただけだった。ヴァリアスは最初2人の申し出を断ろうと考えたが、エドガーには場を明るくさせる才能があると見込んでいたため、彼の同行を許した。
 翌日の夕刻。レバノン郊外の石造りの建物で、ヴァリアス、クラリスの会談が設けられた。円卓を囲むように、参加者が座る。クラリス・レイヤーの隣には青い髪の戦士エンドラル・パルスが控えていた。ヴァリアスはクラリスとオレンジジュースで杯を交わし、交渉を始めた。

「クラリス・レイヤー殿。見たところ貴公は復元者だ。赤い髪、赤い瞳。特別な力も使うことができよう。ならばクレイモアと戦争をする理由は、ないのではないか? クレイモアは人間が憎いだけなのだ。人間から離れ、クレイモアと共に、貴公の夢であるルクシオンの再建を目指すのも、悪くないはずだ」
 ヴァリアスの言葉は魅力的だった。しかしそれは、”アトラス”の言葉ではない。
「そのお言葉が真実ならば、嬉しいお誘いであります。けれどそれは、ヴァリアス公という賢人のお考えに過ぎません。私は、アトラス公のクレイモアは、ルクシオンの再建を許すとは思えません。ルクシオンには”人間”もいますから。それに私は、”人間”と一緒にいすぎました。いまさら彼らを見捨てて、自分だけの夢を追うことはできません」
 彼女は哀しそうに微笑んだ。



《第3部マクシード・ライゼンハルト目次》
第1項 マクシード・ライゼンハルト
第2項 エンドラル・パルス
第3項 クラリス・レイヤー
第4項 エドガー・ラルティーン←いまここ
第5項 将軍ルドルフ
第6項 復元者スヴィーナ
第7項 アトラス

第8項 エルフィ
第9項 ヴァルマサルサ
第10項 レイブン
第11項 人造の神
第12項 レイ
第13項 龍王プロメテウス
第14項 アルバ・ベータ
第15項 狂人達

第16項 グルジア侵攻
第17項 会談
第18項 停戦友好条約
第19項 72(セブンティツー)
第20項 1人の人間
第21項 決裂
第22項 プロフェッサーPO
第23項 エッジ
第24項 神の光

第25項 戦場の男女
第26項 カリアス・トリーヴァ
第27項 儀式
第28項 邪神ディアボロス
第29項 還元者
第30項 光
第31項 セフィロス
エピローグ3

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