第9項 プロジェクト コントロール

end

 エンドラルは、パイルシュレッドの情報網を元に、クラリスの部下アンドレイアと連絡を取り、アドヴァーグの拠点を知ったのだった。彼はアドヴァーグに対して奇襲をかけ、3種の装具のうち、龍王の盾ミッドナイト クロスを奪取した。

 エンドラルとアドヴァーグは剣を交えた。しかしアドヴァーグの海蛇剣デモンズ クロニクルでは、龍王盾ミッドナイト クロスを破ることはできなかった。まさに矛盾と呼ぶにふさわしい戦い。互いの装具は全く傷つくことなく、美しさを保っていた。武器破壊による決着は到底つきそうになかった。

 均衡を破ったのはエンドラルの一閃だった。アドヴァーグの持つデモンズ クロニクルを弾き飛ばしたのだ。デモンズ クロニクルはウィル・スタンスラインの足下へ転がった。
「ウィル、剣をこっちへ投げろ!」
 エンドラルは叫ぶ。
「ウィル、アドヴァーグはあなたをとても大事に思っていたのよ。お願い、剣をアドヴァーグに渡して!」エリカも叫んだ。
 ウィルは震えながら、デモンズ クロニクルに手を伸ばす。彼の中に意識次元からの意志が流れ込む。――それは怒り、憎悪、あらゆる負の感情。

「あああぁっぁ!」
 ウィルの叫びと共に、デモンズ クロニクルが輝きだし――海蛇が復元された。これは通常の復元ではなかった。通常、スピリットからの復元は、復元された方に意志はない。しかしウィルによって復活した海蛇はあらゆる負の感情をまき散らしながら、レバノンで咆哮していた。そして海蛇の声に呼応するように、世界は、異変を起こしていた。空は曇り、稲妻と共に、海面が上昇し、20ベルトはあろうかという巨大な津波が、エレメンシア大陸を襲った。

「こんな展開は想像できん。プ、プロジェクトのコントロールが利かない」
 アドヴァーグはレバノンへも津波の余波が来ることを予見し、エリカやウィルに高台へ非難するよう指示した。彼の予想は見事にあたり、レバノンにも3ベルト級の津波がすぐに押し寄せた。その津波に飲み込まれるようにしてダイダリアサンは海へと移動していく。ダイダリアサンは、怒りと憎悪に任せて津波を引き起こし続け、エレメンシア大陸東部サイドランド、ヴィヴァリン、ルクシオンの南部を津波によって飲み込もうとしていた。
「通常は、プロジェクトの実行状況を実施計画と比較し、ずれが生じていればその影響の度合いを調べ、対策を立てる。しかし今回は、ずれがあまりにも大きすぎる。船も無い状態で海に逃げ込んだ海蛇を倒す手立ては、無い」
 アドヴァーグは僅かに辟易していた。海蛇の咆哮は大波小波を引き起こし、海岸部の街を飲み込んでいく。

「俺は終末時計の針を進めたのか・・・」
「まだだ!」
 エンドラルが叫ぶ。彼はミッドナイト クロスを構えると、精神を集中した。
「限界を超える力が使えなくても、俺は復元者のはずだ」
 盾がファシス・ラビルの姿へと変化した。復元者に備わっている復元の力だ。その姿は龍の棲む山で見たものと寸分違わぬもの――だが目は虚ろで、空っぽだった。その目を見たとき、エンドラルの中で1つ、気持ちの整理が出来た。

『自分の実力で得た協力じゃない。けれど今は、助けてもらうぞ』
 エンドラルはファシス・ラビルの背に乗り込むと、ダイダリアサンの元へ飛び立った。空からは、阿鼻叫喚する人々の様子もよく見えた。津波から必死で逃げ回るもの、やけくそになって銀行へ押し入りカネを奪おうとするもの、全てをあきらめ祈りの中で人生を閉じようとするもの。様々だ。
『アインの時代を思い出しながら、死んでいく人たちもいるかもしれないな』
 エンドラルは彼らの無念さを想い、それでも前を向いた。

『時計の針は元には戻らない。与えられた環境の中で、責務を全うするだけだ』
 エンドラルは剣を構えると、ダイダリアサンの背に向かって一直線に進んでいった。まず一太刀、これには手応えが無い。海蛇は首を海に叩き付け、大きな水しぶきを生じさせた。エンドラルはこれに巻き込まれないよう、ファシス・ラビルに垂直上昇を指示し、また斜め滑降から首元への一撃を叩き込んだ。

「エンドラル、爆薬を使え!」
 アドヴァーグはエンドラルへ向かって爆薬の入った袋を投げる。エンドラルはこれを空中でキャッチし、安全装置を解除してダイダリアサンの背中に投げつけた。ダイダリアサンの皮膚は爆発の衝撃波でボロボロとなり、血がにじんでいく。エンドラルはその傷痕へ剣を突き立て、そのまま首元まで剣を走らせた。エンドラルは垂直上昇から、垂直降下を行い、ファシス・ラビルから飛び降りると、自分の全体重をかけて海蛇の首元へ剣を突き立てた。

 
《第2部エンドラル・パルス目次》
第1項 プロジェクト
第2項 プロジェクトマネージャ
第3項 プロジェクト リソース
第4項 ネットワーク図
第5項 コスト差異
第6項 ガントチャート
第7項 フィージビリティ・スタディ
第8項 プロジェクト使命
第9項 プロジェクト コントロール←いまここ
第10項 プロジェクト・デザイン・マトリックス
エピローグ2

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