第3項 プロジェクト リソース

end

 エンドラル達を襲撃した金髪の男は、シュワンの首を持ったままエンドラルの方を一瞥すると、エンドラルの後方で痙攣を起こしていたウィル・スタンスラインに視線を向けた。そしてウィルに素早く近寄り、みぞおちに一撃を加えて気絶させ、肩に背負うと、そのまま平屋の外へと飛び去っていった。

 エンドラルは一瞬の出来事にあっけにとられていたが、すぐに正気を取り戻し、金髪の男を捕えるため平屋の外へ出た。金髪の男は平屋の隣に乗り付けていたサイドカーにウィルとシュワンの首を乗せると、自らも颯爽と乗り込み、アクセルを吹かして南へと向かった。エンドラルは金髪の男を追うためバイクに火を入れたが、前輪に釘がさされていることに気づく。そのままバイクを動かせば、タイヤだけでなくホイールまでも破損し、大事故を起こす可能性は十分にあった。それでも彼はシュワンを殺害し、ウィルを連れ去った男に追いつくためバイクを動かした。

 エンドラルは、金髪の男の立ち振る舞い、雰囲気に見覚えがあった。その男の名はアドヴァーグ・ドースティン。アイン・スタンスラインの戦友であるサイトウ・エルザルト・ドースティンの1人息子だ。エンドラルは彼に10年以上会っていないが、世の中全てに飽いているような乾いた表情と、スマートな振る舞いは、10年前から変わっていない。

「アドヴァーグ!」
 エンドラルは男に対して吠えた。男はそれに気づき、さらにサイドカーのスピードを上げた。アドヴァーグは高速でサイドカーを運転しながらも、脇のポケットから小瓶を取り出し、ウィルの髪の毛にまぶした。薄い緑色だったウィルの髪の毛は、みるみるうちに茶色へ染まっていく。アドヴァーグがウィルの髪の毛を染めた意図は、すぐエンドラルにもわかった。

「関所か」
 アドヴァーグ、エンドラルの進行方向に見えたのは、『人間による自治を目指す組織ファルコン』が設けた関所だった。簡単なチェックで復元者と人間を見分けている――チェック内容は髪の色だ。復元者は赤や青など派手な髪の色を持つことが多いため、派手な髪の人々は詳細な取り調べが行なわれる。金髪、茶髪、黒髪についてはチェック無しに中へ入ることが出来る。エンドラルは復元者であり、髪の色は青色だった。だから関所を簡単に抜けることが出来ない。
『関所を破るか?』
 エンドラルが胸の内で迷っているうちに、バイクの前輪がガタつきだした。彼はバイクを減速し、近くにあった大岩の影に隠れた。

 エンドラルが今後の行動について考えを巡らせる。巨大な鉄のかたまりが姿を現したのはそのときだった。横幅が5ベルト、縦幅が20ベルトはある、車輪が左右に4つずつ、合計8つもついている巨大な自動車がエンドラルの前に現れていた。自動車の中から出てきたのは赤い髪の女性だった。

「クラリス・レイヤー」

 エンドラルはつぶやいた。クラリスと呼ばれた女性は和やかに微笑み、エンドラルを車内へと案内する。クラリスはエンドラルにウィッグを渡すと、関所へ向かうよう運転手に合図した。運転手のアンドレイアは銀色の髪の男で、関所では復元者でないかと怪しまれたが、彼の持っている通行書を見ると、関所の番人達は渋々街への移動を許可した。銀髪は人間でも復元者でもありえる色だから問題ないとはいえ、関所を通るたびにこう疑われては、気分は良くない。クラリスは、「そろそろあなたも髪を染めるか、ウィッグをつけた方が良いわ」と進言したが、アンドレイアは、そんなことをしたら、せっかくの美貌に傷がつくと話して取り合わなかった。

 クラリスは、デロメア・テクニカ特有の薄いコーヒーを入れてエンドラルにふるまい、久しぶりの再会に喜びを露にしていた。エンドラルは、10数年ぶりに再会したクラリスが、思った以上に美しく成長していて、内心はドギマギしていた。それでもそんな内なる気持ちは見せず、この10年間の出来事をクラリスと共有した。
 クラリスは、カリアス・トリーヴァによって時を止められてしまったエレメンシア大陸の国、ルクシオンを解放するために、ルクシオンの出身者を集めているのだと言う。彼女自身がルクシオンの出身であり、故郷の解放は彼女の本懐だった。このデロメア・テクニカの街には、資本家ヨハネス・クライフハンガーを訪ねるために赴いたそうだ。プロジェクトのリソースであるヒト、モノ、カネのうち、カネを調達しようというわけだ。クライフハンガーは、混じりけのない純粋な”人間”だったが、アイン・スタンスラインの時代を愛した人間であり、過去を取り戻そうとする人々へ資金の援助を行なっていた。

 エンドラルは、伝書鳩を使ってパイルシュレッドのメンバに連絡し、取引先などをあたって、アドヴァーグ・ドースティンの動向を探るよう指示を出した。

 
《第2部エンドラル・パルス目次》
第1項 プロジェクト
第2項 プロジェクトマネージャ
第3項 プロジェクト リソース←いまここ
第4項 ネットワーク図
第5項 コスト差異
第6項 ガントチャート
第7項 フィージビリティ・スタディ
第8項 プロジェクト使命
第9項 プロジェクト コントロール
第10項 プロジェクト・デザイン・マトリックス
エピローグ2

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

ピックアップ記事

  1. ルクシオンがまだ、ユタアース〜内側の世界〜に属していた頃の話だ。 このころルクシオンは、住人か…
  2. 59736578-19f0-4460-a22b-36c70aa80895
    プロのイラストレーターの挿絵であなたの作品を一層魅力的にします! プロのシナリオライターがあな…
  3. 59736578-19f0-4460-a22b-36c70aa80895
    こんにちは。 橋本橙佳です。 このエントリでは橋本橙佳が様々なクリエイタ…

Twitter でフォロー

ページ上部へ戻る
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。