第2項 アイン・スタンスライン2(5−Why)

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 5-Whyという考え方がある。「なぜ?」を5回繰り返すことで、出来事の要因を見つけ出すことができるという考え方だ。これをアイン・スタンスラインの選択に対して実行することは、彼の本質を把握する手助けとなる。

 1. 何故、エルゴルのアカデミーではダメなのか。
 理由は明白だ。エルゴルにアカデミーは存在しない。
また、エルゴルでは、心技体を兼ね備えた人間を国王に、との方針から、格闘技大会によって国王が選出される。それは、身体能力という生まれ持った才能によって、ヒエラルキーが固定されてしまうことを意味していた。だから国外へ脱出することが必要だった。

 2. 何故、オースティアなのか。
 後天的な努力によって、若くして権力を得られる国はどこかを調査した結果、オースティアが最も可能性が高いと判断した。オースティアは、毎年アカデミーの主席が閥徒(国政を行なう政治家)に推薦される仕組みがあり、早ければ20歳前後で国政へ参画ことができる。偏差値が最も高いエル・クリスタニアアカデミーの主席であれば、有力派閥のエリートとして、将来の出世が約束される。

 3. 何故、権力を求めるのか。
 世界の問題解決に関与したい。そのために権力を得なければならない。

 4. 何故、世界の問題解決に関与したいのか。
 彼にとっては、才能と愛に溢れた弟が絶対的な物差しだった。弟が生きていれば、世界の問題をどれだけ解決できたかわからない。弟のようにできる自信は無いが、少なくとも弟に受けた恩を世界に還す義務があると信じている。

 5. 何故、弟のことをそれほど高く評価するのか。
 弟は、母親に虐げられていた頃、彼を1人の兄として扱った。一番苦しかった時に、生きる原動力をくれた思い出は何物にも代え難いものだ。

 これが彼のオースティアアカデミー進学の理由だった。
 さて、オースティアへ行くためには、故郷を出なければならない。だが、故郷には山ノ神の祟りがあるため、アインが村を出れば、母親は夫だけでなく息子の脱走をも食い止めることの出来なかった裏切り者として、村中から批判され、追いつめられるに違いない。アインは、かつて母親が自分に罵詈雑言を浴びせたことを記憶していた。しかし母親が、村人の批判に苦しめられることを、当然の報いだとは考えなかった。
 アインは5つ上の友人ウェールズ・バレンツエーガと共に、村人を山ノ神の束縛から解放する手段を考えた。ウェールズはアルテリア行きを熱望する男で、芸術の才能にあふれていた。彼らはまず『何故、人々が山ノ神を信じているのか』について、5-Whyを用いて原因を突き止めようとした。「なぜ?」を繰り返し、原因が山ノ神の棲む”森”に対する畏怖にあると見込んだ彼らは、畏怖を取り除くためのアイデアを模索した。

 そして、毎年秋に開催される”山ノ神を讃える祭り”における、村民代表挨拶を利用することを考えた。この年の挨拶は、アインが行なうことになっていた。村のカリスマとなった彼の挨拶に、全ての村人が注目していた。山ノ神を殺すチャンスは、ただ1度、この挨拶の中にあった。彼らは失敗の許されない挑戦を挑んだ。

 祭り当日。アインは村人を前に堂々とした様子で語った。
「この故郷の山に、私は育てられました。あらゆる辛さも楽しさも、この山とともにありました。私はこの山が大好きで、これからも山を忘れることはありません。本当にありがとうございました」
 彼は感謝の言葉を述べ、頭を下げた。そして、静かに言う。
「だが、山よ、あなたは、私たちの人生を、縛ることはできない」
 アインは手に持った松明を森へ放った。この凶行に、村人は悲鳴をあげた。
「聞こえるか、山ノ神よ。お前が本当にいるのならば、この炎を消してみろ!神風をふかし、人の愚かな行いを止めてみせろ! その程度のこともできぬ神なら、そんなものは神ではない!」
 燃え盛る炎は、山ノ神の畏敬を、祟りもろとも焼き尽くした。

 このときウェールズは、村で密かな活動を営む『山ノ神の祟りを祓う会』に、アインの母親を保護するよう働きかけていた。それは保険だった。しかしこの保険は不要だった。神の棲む”森”を失った村人は、アインの母親を責めることも無く、次第に山ノ神の呪縛から解き放たれていった。
 アインとウェールズは、故郷の村を出て、それぞれの目的地へと旅立った。 

 
  
《第1部アイン・スタンスライン目次》
プロローグ
第1項 アイン・スタンスライン1(PDCA)
第2項 アイン・スタンスライン2(5−Why)←いまここ
第3項 アイン・スタンスライン3(As Is / To be)
第4項 ケルト・シェイネン1(GROWモデル)
第5項 アイン・スタンスライン4(イノベーター理論)
第6項 アイン・スタンスライン5(FABE)
第7項 アイン・スタンスライン6(ジョハリの窓)
第8項 アイン・スタンスライン7(MVV)
第9項 ライロック・マディン1(ランチェスターの法則)
第10項 アイン・スタンスライン8(レヴィンの変革モデル)
第11項 ライロック・マディン2(ハインリッヒの法則)
Product(第2章以降はこちらへ)
 

 

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