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 2000年前の最終戦争で、世界は一度崩壊した。

 ワールドワイドウェブを構築する通信設備は破壊しつくされ、インターネットは失われた。携帯電話や車、飛行機といった電子機器は鉄の塊と化し、近代文明を象徴する高層ビルは瓦礫へと変貌した。人類が知識の普及と継承の手段として利用してきた書物の全ても失われた。書物がまだ存在していた頃、書物の永久保存を目的として、書面を電子データとしてバックアップする計画が立案され、段階的に実行されていたが、電子データを保存していた全ての記憶媒体は、最終戦争で破壊された。

 最終戦争で使用された兵器は、エーテルと呼ばれるガスを世界中に放出し、世界人口の9割が、ガスの濃度に耐え切れず死亡した。だが、生き残った人々は、SNSで知り合った仲間達と、手紙や伝聞を通して連絡を取り合い、新たな国を創り始めた。国々が築かれるきっかけは、『弱い紐帯』だった。弱い紐帯とは、「知り合いや、知人の知人などのあまり知らない」間柄のことだ。人々は、崩壊した世界の中で、わずかな関係性を頼りに繋がっていった。

 似た趣向の人々が集まった特色ある国の数々が生まれ、時を刻む。2000年前に人々を結びつけた『弱い紐帯』は、気がつけば親しいつながり、つまり『強い紐帯』に変化していた。『強い紐帯』によって結びついた人々は、同質性と類似性を持ち、グループ内のつながりに安心した。それ故に他のグループとの情報伝播や相互理解には消極的だ。結果として、国家間の結びつきは薄れ、それぞれが孤立していた。皆、それなりに幸せだが、ある種の閉塞感が世界を支配していた。

 世の中には様々な課題がある。それは誰もがわかっていた。だが、個人で課題と向き合ったところで、どうにかできるだろうか。いや、できやしない。課題は、個人が取り組むには大きすぎた。誰もが諦め、課題に取り組むことを放棄していた。

 しかしそんな時代に、世の中の課題と真摯に向き合った少年がいた。この少年は、人間が創造し長い年月をかけて洗練してきた知恵――フレームワークを駆使して、自分を、世界を変えようと試みた。
 “彼”によって創り出された時流が、最終戦争後の地球、リンカアースを包み、全ての人々の人生を変えていく。
 この物語は彼と彼の起こした奇跡の軌跡を記したものだ。その物語は短く、儚いがしかし、希望に満ちたものだった。
 さあ始めよう、慈しみの物語を。
 
 
《第1部アイン・スタンスライン目次》
プロローグ←いまここ
第1項 アイン・スタンスライン1(PDCA)
第2項 アイン・スタンスライン2(5−Why)
第3項 アイン・スタンスライン3(As Is / To be)
第4項 ケルト・シェイネン1(GROWモデル)
第5項 アイン・スタンスライン4(イノベーター理論)
第6項 アイン・スタンスライン5(FABE)
第7項 アイン・スタンスライン6(ジョハリの窓)
第8項 アイン・スタンスライン7(MVV)
第9項 ライロック・マディン1(ランチェスターの法則)
第10項 アイン・スタンスライン8(レヴィンの変革モデル)
第11項 ライロック・マディン2(ハインリッヒの法則)
Product(第2章以降はこちらへ)
 
 

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